Benesse
一人ひとりの「よく生きる」のために
ベネッセ サイトマップ
ベネッセ トップ教育トップ
ベネッセ教育総合研究所
Benesse発 2010年「子どもの教育を考える」
このコーナーでは、教育のあるべき姿をベネッセ教育研究開発センターと、皆さんと共に考え、創りあげていきます。
トップページセンター長メッセージ 特集 ビデオメッセージ 研究員リポート 子どものココロ・大人のキモチ USER'S VOICE ご意見・ご感想
『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』更新終了のお知らせ

『Benesse発2010年「子どもの教育を考える」』は、2010年3月31日をもって、更新を終了させていただきました。
これまでたくさんのアクセスをいただき、ありがとうございました。

トップページ > 研究員リポート > データからみる今と未来 第38回

研究員リポート
データからみる今と未来

第38回 小学校低学年から通塾する子どもの増加について

ベネッセ教育研究開発センター 山田剛 (2009/2/18更新)

 文部科学省が平成20年8月に発表した「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」(文部科学省のホームページへリンクしています)で、昭和60年から平成19年にかけての通塾率の変化を小学校低学年に焦点をあてて見てみると、小学1年生で6.2%だったのが15.9%に、小学2年生で10.1%が19.3%に、小学3年生で12.9%が21.4%に増加している。(こちらの図を参照ください→ 調査データクリップ『塾・習い事』【3-1】
 このように、この約20年の間に小学校低学年の段階から学習塾に通う子どもが増えている。今回は、同じ調査から他のデータを紹介しながら、こうした変化について考えてみたい。

 子どもたちは何年生ぐらいから学習塾に通うようになっているのだろうか。図1は、同じ調査における「これまでの学習塾への通塾状況」の学年別の結果を示している。

図1:これまでの学習塾への通塾状況

図1:これまでの学習塾への通塾状況

子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告(文部科学省)



 このを見ると、かなり早い時期から学習塾に通う子どもがいることがわかる。たとえば、すでに小学3年生で、学習塾に通った経験のある子どもは約4分の1、小学6年生では、45.2%、つまり半数近くがそれまでに学習塾に通う経験をしている。地域によって、この割合は異なるだろうが、小さな子どもが学習塾に通う姿は日本全国どこでも日常的な風景となった。
 もう2つデータを見ておきたい。図2は、学習塾に通わせた理由、そして、図3は学習塾に通わせない理由だ。いずれも割合の多い理由だけを取り上げてみた。

図2:学習塾に通わせた理由(保護者)、図3:学習塾に通わせない理由(保護者)

子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告(文部科学省)


 最初に、学習塾に通わせた理由で、「子どもが希望するから」が34.7%と多く、通わせない理由でも「子どもがいやがるから」が22.8%となっている。20年ぐらい前、「つめこみ教育」が批判されたころの学習塾のイメージ−強制的に勉強させている−といったことは、今の学習塾には当てはまらなくなっているようだ。

 そのことを確認した上で、ほかの理由で気になった項目をあげてみたい。まずは学習塾に通わせた理由のなかで、「学校の授業だけでは受験勉強が十分できないから(19.3%)」「学校の授業についていけないから(18.7%)」「学校の授業だけでは物足りないから(15.6%)」など。これらは、いずれも今の学校に満足できていない場合の理由と考えることができる。「学習塾では一人一人ていねいに教えてくれるから(18.0%)」「進路選択や受験に必要な情報を得たいから(16.3%)」は塾のメリットをあげたものだが、裏をかえせば、学校ではこのことが不十分だからともとれる。逆に、学習塾に通わせない理由のなかに、「学校の勉強で十分だから(27.8%)」が入っている。このように学習塾に通わせるか通わせないかに、今の学校に満足できているかどうかが関係していることがわかる。

 「家では勉強を見てやれないから(28.8%)」「一人では勉強しないから(28.0%)」は、家庭では学習を十分に保障できないケースを示している。通塾しない理由で「家庭で勉強をみてやれるから(20.9%)」があがっているが、多くの場合、家庭で不足している学習を補完するには限界があるだろう。その不足分を補うものとして学習塾が選択されていることがわかる。

 そして、ほかの通わせない理由、「学習塾の経費が圧迫するから(26.4%)」は、行かせたくても経済的に無理な家庭があること、「学習塾に通うにはまだ早いから(29.9%)」「勉強よりものびのび遊ばせておきたいから(25.9%)」は、今の自分の子どもの生活にとってマイナスとなることを心配した理由と考えられる。この2つは通塾しない理由としてあげられたことだが、逆に通塾している家庭ではこうしたことが負担や心配事になっている可能性がある。実際に別の調査項目で、学習塾に通わせる中で心配していることの上位3つは、「学習塾の経費が家計を圧迫する(22.2%)」「学習塾の行き帰りの途中での事故が心配になった(20.3%)」「のびのび遊ぶ時間が不足しがちだ(14.5%)」となっている。

考察とまとめ

 最初に示したように、通塾者の低年齢化が進んでいる。こうした状況は、子どもが小さいころから保護者に難しい選択を迫っているといえる。早い時期から通い始めるほど経済的な負担は増えるし、子どもの心身両面での心配事も多くなるはずだ。通わせていない保護者にとっても、周囲で通うものが増えると、通わせないことへの不安や迷いが生じる。経済的な理由で通わせていない場合は、子どもに申し訳ないという気持ちを抱いてしまう場合もあるだろう。

 先ほど確認したように、学習塾は強制的に行かされるような場ではなくなっている。学習塾にも優秀な先生がいて、そこで学習のおもしろさを発見する子どももいるだろう。通塾者が増える背景には保護者の多くが教育熱心だという面があることもおさえておくべきだ。私は、家庭での個々の選択や判断が問題なのではなく、現在、進行している状況の背景にあること−学校が保護者の求めを受けきれず、その不足部分を家庭だけでは解決できないこと−を課題と捉えたい。

 すでに取り組みが始まっているが、第一に公立学校の教育力の向上に期待したい。そして、学校の授業だけで不足する部分があるのなら、それを補うような家庭での学習が可能になるサポート、たとえば子どもが自主的に学べる教材や学習方法を開発していくことが求められている。そのことが、より多くの子どもに教育の機会を保障することにつながるのではないだろうか。



ページトップへ

→ トップページ → 研究員リポート → 第38回 小学校低学年から通塾する子どもの増加について

この記事に対するご意見・ご感想をお寄せください。
(募集は終了しました)
ご意見・ご感想を読む