BERD 2007 No.8
【レポート】
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十河(そごう)直幸
ベネッセ教育研究開発センター研究員


BERD
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第4回 学習基本調査・国内調査結果より
─時系列での子どもの学習意識や実態の変化から見えてくるもの─
十河(そごう)直幸[ベネッセ教育研究開発センター研究員]

数年来、週刊誌・経済誌などでは教育を特集記事として恒常的に取り扱うようになってきている。
こうした背景には2002年以降に実施された現行教育課程に前後しての教育への不安・不満があり、メディアの扱いにもそれが反映されているものと考えられる。
また、現在の政府も教育改革を重点施策に掲げ、各界から有識者を募り「教育再生会議」を開催するなど、国民の「教育」に対する関心は以前にも増して高まっている。
そこでベネッセ教育研究開発センターが1990年から実施している「学習基本調査」の結果を基に、ここ16年間での児童・生徒の学習に対する意識・行動の実態の変化をデータから追う。
●調査概要
調査方法
学校通しの質問紙による自記式調査
調査時期
第1回:1990年9〜10月
第2回:1996年5〜6月
第3回:2001年5〜6月
第4回:2006年6〜7月
調査対象
小学5年生:全国3地域〔大都市(東京23区内)、地方都市(四国の県庁所在地)、郡部(東北地方)〕第1回2578名、第2回2665名、第3回2402名、第4回2726名
中学2年生:全国3地域〔大都市(東京23区内)、地方都市(四国の県庁所在地)、郡部(東北地方)〕第1回2544名、第2回2755名、第3回2503名、第4回2371名
高校2年生:全国4地域〔東京都内、及び東北・四国・九州地方の都市部と郡部〕、普通科を対象。第1回2005名、第2回2615名、第3回3808名、第4回4464名
学習基本調査とは
 学習基本調査は06年に第4回目が実施された。調査内容は学習に関する意識・実態に関するもので、質問項目の一部は時代の変化に合わせて多少の追加・削除はあるものの、ほぼ同一である。また調査対象は、経年での比較や地域による違いを見るために有意抽出した同一校に調査を依頼している。そのため全国的な平均値を示すものではないが、時系列での定点観測による変化を検証するものとなっている。
 さらに調査対象を小学5年生、中学2年生、高校2年生としており、学校段階による違いも見られるようになっている。
 このような調査の枠組みの下、学習基本調査は90年よりほぼ5か年ごとに実施されている。

90年代以降の初等・中等教育の話題

 では90年実施の第1回調査から06年実施の第4回調査までの16年間、教育界ではどのような出来事があったのか。図表1の年表に初等・中等教育における学習に関するトピックスをまとめている。
 調査実施の前年の89年は、『新しい学力観と個性尊重の教育』を目指した「学習指導要領」(小・中学校第5次改訂、高等学校第6次改訂)が告示され、小学校低学年での「生活科」の新設、高等学校では社会科の「地理歴史科」と「公民科」への分割再編が定められた。また70年代前半の第2次ベビーブーム(71〜74年)で生まれた、いわゆる団塊ジュニア世代がちょうど高校生段階にあり、高等学校の生徒数が564.4万人と過去最高となったのもこの年であった(文部科学省「学校基本調査」より)。経済面ではバブル景気の真っ只中で、社会全体として“右肩上がりの成長神話”を信じてやまず、そのような中で入試競争が激化を極めた時代でもあった。このような時代背景の下で、90年に第1回学習基本調査が行われた。 
 しかし92年に大学・短大志願者数が121.5万人とピークを迎え、さらに89年告示の学習指導要領の実施(小学校92年、中学校93年、高等学校94年)、学校週5日制の段階的な導入(92年、95年)などがあり、96年に第2回学習基本調査が実施された。
 そして98年の小・中学校の「学習指導要領」(第6次改訂)、翌年に高等学校の「学習指導要領」(第7次改訂)の告示では、完全学校週5日制の下、児童・生徒の「生きる力」を育成することを目指し、授業時数の大幅削減と教育内容の厳選と、「総合的な学習の時間」の新設が定められた。特に厳選された教育内容の項目には「台形の面積の計算方法」「円周率の扱い」などが含まれており、批判の対象になったことは記憶に新しい。いわゆる“学力低下論争”が盛んであった01年に第3回学習基本調査が実施された。
 しかし02年以降は、文部科学省による「確かな学力の向上のための2002アピール─『学びのすすめ』─」で「学習指導要領は最低基準」とする方針が打ち出され、各種の学力向上事業が実施されるなど、いわゆる“脱ゆとり”路線への政策転換が進められた。
 以上のような歴史的な背景を踏まえた上で、今回の調査結果から見えることについて次に述べる。
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