ベネッセ教育総合研究所
特集 チャレンジする短大
宮崎女子短大
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授業参観では手法の見直しも

 02年度からは、教員相互の授業参観も導入した。初年度は2カ月間の授業研究月間を設け、その間に原則として週1回、最低計8回は他の教員の授業を参観する方式を取った。そのうえで、各教員が「参考になった点」「改善したほうがいい点」などを、授業者とその学科長に提出。その中で参考になった意見や、それに基づいた改善方針を授業者が書面にまとめ、推進委員会が冊子にして全教員に配る。これは、授業研究会の材料としても活用された。
 同短大では、全教員の全授業に対し、学生による5段階評価を導入している。参観される授業が、他の教員を意識した「特別な授業」になってしまうと、学生からは「いつもと違う」とシビアな評価を受ける可能性もある。そんなプレッシャーも加わり、導入当初の教員の抵抗感は大きかったが、2カ月間で次第に参観を受け入れる雰囲気が形成されたという。
 ただし、このやり方には課題もあったと宗和教授は振り返る。「参観者は、その授業だけをとらえて評価をすることになります。そのため、授業の全体の流れが理解されないまま批評を受けることもあり、お互いしこりが残ってしまうのです」。
 そこで03年度は、研究授業を設定し、それを教員全員で見学する形に変えた。しかも、あらかじめ授業者が授業計画書などを配り、参観者に学習目標や授業手法を説明したうえで公開。その結果、参観者からは「授業の表面だけではなく、背景にある悩みや工夫が見えてきた」「より深い話し合いができるようになった」との声が寄せられたという。こうした成果を踏まえて、今年度もより有効な授業参観の実施方法を検討していく方針だ。

教員間の連携にも貢献

 年間を通じた取り組みを総括するのが、年度末の個人自己点検評価だ。年度当初に立てた教育目標の達成度を査定するほか、学生による授業評価と、教員相互の授業参観を踏まえての評価も行う。
 担当する授業ごとに、授業評価に基づいて学生の反応を総括し反省点を挙げ、5段階の自己評点をつける。授業参観については、参考になった点や、それに基づいた授業改善方針を書き込む。この個人自己点検評価票は冊子にまとめられ、全教員に配布される。一方、学生による授業評価の結果は、5段階の評点に関しては教員だけで共有するが、各授業に対する学生の感想は、担当教員のコメントをつけて冊子とし、誰でも見ることができるように図書館などに置いている。
 「これらの活動を通して、各教員が授業や学生とのコミュニケーションにより熱心に取り組むようになりました。また、何よりもFD活動に対する意識が高まり、教員同士の連帯感が強まったのは大きな収穫です」と、宗和教授は一連の活動の成果を分析する。
 実は、初めは学生満足度を指標とすることに対し、「ただでさえ、授業中の私語や携帯メールなどで苦労しているのに、なぜそこまでしなければならないのか」といった不満や、「忙しいのに」という声も一部の教員から上がっていた。それが現在は、これらのFD活動を約9割の教員が「良い」と評価しており、意識は着実に変化している。若手教員の企画提案を、学長をはじめとする現執行部が受け入れ支援したことや、専任教員総数45人という短大ならではの規模も、こうした成果を生み出した一つの原因だろう。
 03年度には、この取り組みが「特色ある大学教育支援プログラム」に県内で唯一採択された。そのことで、教員の意欲はますます高まっているという。
 しかし一方で、学生満足度90%という目標値にはいまだ到達しておらず、ここ数年は80%代半ばで足踏み状態が続いているという課題もある。「目標達成のためには、きめ細かい教育指導をすると同時に、学生自身に学ぶ実感と達成感を抱かせる教育内容の充実が、不可欠だと考えています」と、宗和教授。04年度からは個々の教員のFD宣言に加え、学科ごとのFD宣言も導入した。また、教育内容の充実度を客観的に測るための指標も検討していく方針だ。


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