ベネッセ教育総合研究所
特集 チャレンジする短大
千葉明徳短大
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REPORT 5
オープンキャンパスや入試を教員の研究課題に
 千葉明徳短大では、「体験から学ぶ」という考え方を柱に、1992年度から演習や実習を中心とするカリキュラムを導入した。オープンキャンパスや入試、入学式などを短大への導入教育として位置付けている。
 大学のオープンキャンパスや入試は、職員が中心となって企画・運営されるのが一般的だが、千葉明徳短大では、教員の研究テーマとして位置付けている。毎年、教員全員がそれぞれのテーマで「教育実践プロジェクト」を組織し、文部科学省の「高等教育研究改革支援経費」の受給を申請。04年度は「教育実践の公開と開放を通したネットワーク」「プレ学習としてのオープンキャンパス」など13の研究が支援経費を受給する。
 例えば、「プレ学習としてのオープンキャンパス」は、保育の現状や同短大の教育内容、資格取得や卒業後の進路に関する情報を高校生参加型の公開授業によって伝えることで、受験生の志向や問題意識を明確化し、入学後の学習へのスムーズな導入を図ることを目的とする研究だ。毎回参加者へのアンケートを実施し、参加回数と入学率、入学後の学習意欲や成績などとの相関関係を分析。オープンキャンパスに関わった学生の意見や学習効果も踏まえ、次回からの内容改善に役立てている。
 こうした研究は、全教員が参加する教育実践検討会で発表、課題について討議される。「オープンキャンパスや入学式などの行事を研究課題として教員に担ってもらうことにより、より効果的な教育を追求する意識を持つようになった」と箙(えびら)光夫学長(3月の取材時。現在は研究協力部長)は説明する。

オープンキャンパスで演習を公開

 同短大では入学直後から附属幼稚園を含む八つの幼稚園で年間約10日間の通年実習が行われる。また、「幼稚園実習」をはじめ、「保育所実習」や福祉施設などでの「施設実習」が資格・免許取得のために行われる。いずれも実習前に学生は学習の狙いや課題を整理し、実習後にその感想や新たな課題をまとめて発表。1、2年次を通じてこうした実習サイクルを繰り返すことで、子どもを理解しながら自らの保育観を養い、学びを深めていく。
 こうした教育内容は、オープンキャンパスでも公開されている。毎年5〜8月に計6回実施され、演習の一部を公開し、参加者と学生が一体となって保育を学ぶ形式をとる「公開授業」が中心となる。学生が積極的に参加し発言する教育方法を高校生に擬似体験させることを目的とし、内容によっては学生が企画・運営にあたる。
 03年5月には、附属幼稚園で「子どもの遊びを体験しよう」をテーマに、さまざまな遊びにトライした後、学生が実習の内容発表を行った。また、幼稚園教諭として活躍する卒業生が、仕事内容や子どもの様子などを話す機会も設けている。「本学が第一希望の生徒に入学してもらうことが目的。教育方針や授業内容を理解した上で選んでもらえるよう、授業内容などできるだけありのままの姿をみせるようにしている」と箙氏は言う。

教員主導のワークショップ型入試

 入試は、学校推薦、自己推薦、一般の3方式とも学力試験を課さず、「遊びのワークショップ」と呼ばれる80分間のグループ・ディスカッションと小論文、内申書により合否を判定する。ワークショップでは、受験生を6〜8人にグループ分けし、与えられたテーマで共同作業やディスカッションをさせる。評価は1グループに対し4人の教員によって行われ、意見の論理性や視野の広さ、協調性や柔軟性を判定する。
 ワークショップは、教員が持ち回りで担当するが、テーマ決定のために全教員が意見を出して討議を重ねる。このほか、運営・評価についても通常の学科試験に比べて教員の作業負担は非常に大きい。「将来、幼児教育者として即戦力となる学生を育てるためには、入試で、学力ではなくその資質や可能性を見極める必要がある。また、受験生が本学の教育方針とマッチするかどうかを判断する機会とも考えている」と箙氏。
 今後は、社会状況の変化や学生の学習意欲の低下を踏まえ、「講義形式の授業では養えない能力を向上させる教育をいかにカリキュラムに落としこみ、入試と関連性を持たせていくか、さらなる改良が必要」と語った。


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