ベネッセ教育総合研究所
特集 顧客・応援団としての卒業生
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【レポート4】神戸学院大学人文学部
評価に耳を傾ける
満足度や期待を聞き卒業後教育も
 神戸学院大学の人文学部では、大学に対する満足度や期待に関する卒業生調査を実施した。入学前と卒業後を含む一貫教育の構想もあり、そこに調査結果を反映させる。
再就職の情報提供も母校に期待

 調査は、2002年度の卒業生を対象に03年12月から04年2月にかけて行った。実社会で役に立つ教育という観点からの大学に対する満足度、卒業後に必要とする支援などについて質問。365人に調査票を郵送し、30%にあたる106人から回答を得た。
 その結果、学部に対する全体的な満足度は78.3%だった。特にハード面での評価が高く、図書館は「非常に満足していた」が44.3%で「まあまあ満足していた」と合わせると90.5%に上る。データベース利用法などを説明するライブラリーツアーを初級編・中級編に分けて実施するなどのフォローが、活用度と満足度を高めたと推測される。コンピュータ設備も「満足」が計78.3%だった。
 一方で教育内容や教育方法に対する満足度がやや低いことについて、水本浩典学部長は「社会に出たばかりということもあり、もっと職業に直接役立つことを教えてほしかったという意識が強いのでは」と分析する。
 在学中に身につけたかったことでは「資格・免許取得」が51%でトップだった一方で、卒業後のエクステンション講座への期待は6.6%。これについては「日常の社会生活が多忙なため、そこまでの余裕がないのだろう」とみる。  注目すべきデータは、卒業後に期待する支援の中身だ(図表)。
図表 卒業生支援に関する要望(複数回答)

図表


 ハード面への満足度を反映して学内施設の利用が1位だが、離職した際の再就職支援、求人情報の提供がいずれも50%を超える。同学部長は「卒業生からは、在学中の就職活動などで抱いた実社会のイメージと現実とのギャップがよく指摘される。転職したくても大学とは縁が切れてしまっているため、独力で動かざるを得ないのが現状」と説明。卒業生が、在学中と同じようにハードとソフト両面での支援を求めていることが読み取れる。
大学の責任として、卒業後教育の実施へ

 人文学部では、4年間の教育に入学前の半年間と卒業後の1年間を加え、トータル5.5年間の一貫教育を行う「5.5年教育プログラム」の構想があり、02年度入学生から実施に移している。
 これまで多くの大学は、送り出した学生が能力を十分発揮しているか、社会人としてどんな課題を抱えているかに関心を払わなかった。このプログラムはそんな大学教育のあり方への疑問が出発点。水本学部長は「家電メーカーがアフターケアをするのは、製品に自信があるから。教育に責任を持つ上で、卒業後も一定期間のサポートが必要ではないか」と指摘する。
 入学前の半年は、大学教育を受けるための準備期間に位置付ける。推薦入試だけでなく一般入試の合格者も含む入学者全員に読書やレポートなどの課題を提示。提出物を入学後のゼミで取り上げるなど、大学教育とリンクさせている。
 入学後4年間の教育では、学内ミニコミ誌の発行や学部ホームページの制作、学部行事の企画・運営などを行う「イベント学生スタッフ」を導入。学内インターンシップともいえるこれらの事業には、主体性を養い遂行能力を高める狙いがある。
 卒業後教育をどうするかは、今後の課題だ。卒業生調査の結果も反映させ、今の3年生が卒業するまでにプログラム内容を固める。満足度が高い施設をどの程度活用できるか、再就職など実務的な関心にどう応えていくかがポイントになりそうだ。


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