| 政府主導の構造改革や、文部科学省が進める大学設置基準の緩和などによって、従来の大学の枠にとらわれない新しいタイプの高等教育機関が次々に誕生している。とりわけ株式会社や専修学校などの学校法人が設置した大学では、既存の大学が思いもつかなかった発想による教育内容や手法を導入していることも多い。本特集ではそれらの事例を紹介しながら、既存の大学でも生かせる手法は何か考える。 |
【概説】
「学生第一主義」の徹底で大学改革に一石を投じる |
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規制改革の波に乗った四つの参入パターン
高等教育分野への新規参入例は、設置母体や緩和された規制などの種類によって、およそ次の4種類に分類できる。
第一は、大学の設置場所やキャンパスの必要面積など、主に建設・建築上の設置基準緩和で設置が可能になった大学だ。
中でも影響が大きい規制緩和は、都心での大学新設や学部増設などを制限していた「工業（場）等制限法」の撤廃だ。大都市での過度の人口集中を防止するため1959年に制定された同法は、その後数度にわたり制限区域を拡大。大学の郊外移転を促進することとなったが、近年の経済不況や社会構造の変化に伴う都心回帰現象を受け、02年7月に廃止された。文部科学省は同法に基づいて、大都市部における大学の新増設を原則的に抑制する方針をとっていたが、撤廃を受けて抑制方針を解除している。
また、大学設置基準における校地面積基準や自己所有要件も大きく緩和された。かつては校地は校舎の6倍以上で100％自己所有だったが、その後自己所有比率は原則として2分の1以上（一定の条件下では3分の1以上）となり、98年には校地も校舎の3倍以上と弾力化。03年には校地は学生一人あたり10平方メートルとなり、自己所有要件も、校地は校舎面積相当分以上、校舎は国や地方公共団体からの借用も可能など、大幅に緩和された。
これらの制限解除は、既存の大学の都市部での学部増設などを促したが、同時に、大学運営への新規参入に道を開くことにもなった。特に専修学校などを経営する学校法人の大学設置を後押ししている。04年度に開学した京都情報大学院大学、情報セキュリティ大学院大学などは、情報系の学科を擁する専修学校の代表的な参入例といえる。05年度も専修学校を持つ法人による情報系の大学院大学の設置認可が申請されている。
第二は、構造改革特区による規制緩和の特例措置を利用して設置された大学だ。株式会社立の大学第1号として大きな注目を集めたLEC東京リーガルマインド大学、デジタルハリウッド大学院大学がこれにあたる。構造改革特区では、教育に関する様々な規制緩和のメニューが用意されている。たとえば、「学校法人以外でも私立大学の設置が可能」「学生一人あたりの校地面積は10平方メートル以下でも設置可能」「校地・校舎は借用でも設置可能」などだ。
特区計画自体は自治体が提出しなければならないが、自治体に働きかけることによって、民間企業も大学経営に乗り出すことができる。テナントビルのフロアを借りて教育事業を展開している各種教育団体も、大学を設置できるようになったわけだ。
04年度現在は、株式会社立大学はこの2校だけだが、来年度は、3校目を目指すビジネス・ブレークスルー大学院大学のほか、デジタルハリウッド大学院大学が4年制大学を、LEC東京リーガルマインド大学が大学院を、それぞれ特区制度を利用して設置認可申請中だ。このほか、千代田区では別の株式会社による「政策立案大学構想」も、新たな特区計画として申請しており、特区を利用した株式会社からの大学運営への参入は、今後もさらに加速しそうだ。
しかし課題もある。株式会社は会計基準が違うため、財務状況については学校法人のような厳密な審査は行われない。文科省も経営全般についてまで監督する権限はないため、十分なチェック機能が働いていないのが現状だ。
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