ベネッセ教育総合研究所
教育力の時代
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教育力の時代―FDのその先へ―

第9回 子ども向け理科教室の企画運営で議論する力や伝える力を養う
工学院大学
 工学院大学が、毎年夏休みに多摩地域の小中学生向けに開催している「大学の先生と楽しむ理科教室」が、2004年度の「特色ある大学教育支援プログラム」(GP)に採択された。毎年約7000人が参加し、地域貢献事業の成功例とされているこのイベントを、工学院大学では学生の教育の場としても活用している。
体験や自作のコーナーで、物づくりの楽しさを体感

 夏休みも終盤に近づいた8月21・22日、工学院大学の八王子キャンパスで「大学の先生と楽しむ理科教室」が開かれた。構内には工学技術を利用する工作などが体験できる75のコーナーが設置され、教室から教室へと渡り歩く子どもたちであふれかえった。各コーナーでは、白衣を着た学生が、用いられている工学技術などを丁寧に解説。中には、付き添ってきた保護者が夢中になって工作に励む姿も見られた。
 工学部11学科、大学院工学研究科5専攻からなる工学院大学が、全学的な事業として実施している理科教室は、04年度で11回目。八王子市などの教育委員会の後援も受け、すっかり地域の恒例行事となっている。これまでの参加者数はのべ6万3235人、その3分の1がリピーターだ。今回も7282人が参加した。この盛況ぶりの大きな理由となっているのは、物に触れる、物をつくるといった体験、自作を重視したテーマ設定だろう。
 今回の理科教室では、地震を再現する振動台を使って阪神・淡路大震災の震度を体感させる「地震なんか怖くない?」や、水圧でペットボトルのロケットを飛ばす「色々なロケットを打ち上げてみよう」など体験型コーナーが約30種類。自作型コーナーは、缶バッジ、IC(集積回路)を使った電子オルゴール、ハンダを使って3時間かけて制作する「線上を走るロボット」など約40種類設けられている。
 理科教室の運営を担当する矢ケ崎隆義教授は、「子どもに物づくりの楽しさ、大切さを知ってもらうことがコンセプト。そのため体験、自作できること、作った物を持ち帰れることをテーマ設定の基本としています。家族に作品を見せ、『こんなことをしたんだよ』と胸を張って伝えてもらうのが理想ですね」と話す。
 理科教室は、社会的に問題となっていた子どもの理科離れを防ぐとともに、学生に主体的に関わらせることで教育効果も期待できる地域貢献事業として15年前に発案された。工学単科の大学ということに加え、小中学校での出前授業をしていた教員が多かったことが、全教職員を挙げての新事業の後押しとなった。1994年に第1回を開催、予想以上の反響を得たため、その後は定期行事とし、毎年予算を組んでいるという。


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