ベネッセ教育総合研究所
特集 教育の質をどう保証するか
 
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大学の主体的な情報公開を

 今回の答申を受けて、文科省は設置認可制度の具体的な見直しにかかり、併せて大学による主体的な情報公開も促していく方針だ。申請書は大学の企業秘密にあたり、文科省から公表することはできないというのが、一貫したスタンス。認可後は情報開示請求があった場合に、設置審からの指摘内容も含め開示しているが、教員についてはプライバシー保護のため氏名のみで、実績など「質」をチェックするための情報は伏せられる。
 文科省の担当者は、「こうした情報は大学が自らオープンにし、評価と選択を委ねるべき」と話す。答申では、申請書のことを「社会に対する『約束』」と表現、社会が履行状況をチェックできるよう、HP等での開示を求めた。文科省ではまず「大学の憲法ともいえる学則」(担当者)について、変更を届け出た時の内容の公開を促す措置を、05年度中にも実施したい考え。より関心の高い学部・学科の設置についても、「設置審のチェックを受けない届け出の場合、社会にチェックしてもらうべき」との考えから、同様の措置を検討中だ。
 規制緩和の方向への流れは今後も続くと考えられる。そこでは、なくすべき規制と残すべきルールとの整理が必要で、その根本には「大学とは何か」という問いかけを据える必要がある。
 「大学設置基準はあくまで最低の基準であって、それ以外にも、大学である以上求められる不文律のようなものがある。設置認可が従来の大学コミュニティの中にとどまっていた時代には、これがおのずと共有されていた。異分野からの参入によって暗黙の了解が通用しなくなり、『そんなことはどこにも書かれていない』という問題が出てきた」。取材を通し、複数の大学関係者からこんな言葉が聞かれた。
 「大学である以上求められる要件」を「大学コミュニティの中の暗黙の了解」にしてきたことに、問題はないだろうか。社会に対して「大学とは何か」という議論を投げかけながら、共通認識を基にした不文律を確立する努力がなされていれば、今「問題」とされていることの一部は回避できたかもしれない。世界に通用する大学を作り育てていくために、質保証システムの構築と並行して、今後こうした合意形成をしていくことになるだろう。それは、大学を作りたいという株式会社も加えた開かれた議論でなければならない。



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