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アイデアの引き出しがついたツールボックスを手にする学生 |
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考えることの根幹が問い直される発想力教育
岡山大学工学部機械工学科の「技術文章学」の授業では、当初、学生から「こんなことを大学に来てまでやらされるのか」という強い反発を受けたという。しかし学生を納得させ、単純なトレーニングを繰り返し最後に満足感を与えてみせよう、という教員の粘りと真剣さが抵抗を和らげ、学びに導いていった。
地味な教育作業だが、ユニークな手法によって大きな成果が挙がると、学外でも知られるようになる。04年の「特色ある教育支援プログラム」で文科省にも認定され、多くの大学から注目されるところとなった。そのノウハウが詰まった教科書「知的な科学・技術文章の書き方」は、機械工学科以外の学生にも活用されている。
「技術文章学」の授業は、学生に受講の意義を納得させることから始められるが、これは「創成プロジェクト」でも同様だ。
学生は多くの専門科目の単位が取れたら、次は自分の研究に近い内容が学べると思いがちだ。しかしそうは問屋が卸さない。研究がしたいのであればまずαという「発想力教育」を受けなさいと促す。このαは研究の予習でも復習でもない。言ってみれば「知識の寄せ集めや単線思考でなく、パラダイムを転換してみよ」という謎かけに近い。考えることの根幹が改めて問い直されるこの+αこそ、「創成プロジェクト」なのだ。
この科目では、思考実験という訓練をする。発想は学べるものではないとあきらめてしまいがちな学生に、発想にも王道があると教え、パターンを伝授する。その際に「メカニカル発想法」「発想ツール」など、学習のためのわかりやすい造語が示される。
学生たちに「アイデアの引き出しが付いたツールボックス」を与えることによって、発想力は天賦の才というコンプレックスを乗り越えることができる、と勇気づける。ここに巧みな教育ストラテジーが仕組まれている。もちろん提示される課題も豊富で楽しい。
この「創成プロジェクト」を楽しみつつ学んだ学生は、創造性が求められるときに頼りになるツールボックスを入手することになる。まるでゲームの主人公が様々なアイテムを手にするように。そして、彼らの「アイデアの引き出し」は、しかるべき機会を得て開けられるのを待っているにちがいない。 |
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