特集 教員養成システムの論点

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【現場レポート 3】兵庫教育大学

教職大学院で授業のスペシャリストを育成

中教審素案をすべて反映

 兵庫教育大学では、2007年度の教職大学院設置に向けて準備を進めている。現在の修士課程定員300人のうち100人を教職大学院(専門職学位課程高度教育実践専攻)にあてる。そこに、「学校指導職コース」(20人)、「授業実践リーダーコース」(30人)、「心の教育実践コース」(20人)、「小学校教員養成特別コース」(30人)の4コースを設置する予定だ。
 梶田叡一学長は「本学は、創立当初から教職大学院のコンセプトを先取りしていた新構想大学の一つである。その試みが全国に広がらなかったことへの反省に立ち、新制度の下で教員の資質向上のためのモデルを示したい」と語る。
 設置するコースには、中教審の素案に盛り込まれた教職大学院で考えられる要素を、ほぼすべて取り入れた。「学内には、手を広げすぎることへの懸念もあったが、新構想大学の使命として、全分野をカバーすべきであると考える」(梶田学長)からだ。
 学校指導職コースは、管理職養成の機能に限定し、将来、校長、教頭、教育委員会の指導主事など管理業務に従事する人材を育成する。危機管理への対応のほか、地域や保護者、教育委員会との連携の方策などを中心としたカリキュラムになる。学生は、幹部候補生として教育委員会から派遣される教員が中心になる見込みだ。
 すでに05年度から、兵庫県教委や鳥取県教委と連携し、同様の目的のスクールリーダーコースを修士課程に設置してあり、これを発展させる形で改組する。
 「修了者が必ず校長や教頭になれるわけではないが、リーダー的な人材として活用してもらわなければ意味がない。入学にあたっては、私立学校なども含めて任命権者のイニシアチブが入ってくる形にしたい」(梶田学長)
 授業実践リーダーコースでは、授業開発・運営のスペシャリストを育成する。教材や指導法の研究、カリキュラム開発などを専門的に学び、「子どもたちに本当に力を付けさせることができる教員」を養成する。同じ科目でも、教職経験の有無によって内容を変える方針だ。
 心の教育実践コースは、道徳や学級活動など教科外教育を中心に優れた教員の養成を目指す。当初は、スクールカウンセリングや養護学校など特別支援教育の専門家を養成するコースを検討していた。
 しかし、これらは既設の大学院でも養成が可能なため、学校の中で心の問題に対処できる人材を育てるという方向に切り替えた。同コースでは、現職教員だけでなく、学部新卒者も対象とする。
 小学校教員養成特別コースは、社会人と他学部出身者を対象に、3年間で小学校教員の免許取得と高い専門性の獲得を目指す。すでに03年度から修士課程に導入していて、教職大学院への移行に伴い教員やカリキュラムを見直す。
 各コースの実習は、より実践的な内容になる。学校指導職コースでは、教育委員会や校長室などに派遣する。梶田学長は、「責任ある立場の人と一緒に活動しながら、内部から改革を促す『アクションリサーチ』的な実習になるのではないか」と言う。


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