特色化の基本的な手法は、多様な教育課程の設置だ。将来の職業選択を視野に入れた学習を重視する総合学科は、04年度現在、全国で250校に増えている。生徒が主体的に授業を選べる単位制高校は、全日制課程だけでも342校あり、今や中学生と保護者にとって、ごく一般的な選択肢だ。
　英語科や理数科を設ける高校、普通科の中に英語や理科のコースを設定している高校もある。工業科や農業科などの専門科を再編し、大学の理工系への進学を目標に掲げている高校もある。「以前なら大学進学を前提としていなかった高校でも、教育課程が変わったことで進路指導、キャリア教育も多様化し、少数ながら目標としている大学への進学者が出てくるようになっている」と飯塚氏は話す。
　今後、注目したいのは公立の中高一貫教育校だ。既存の中学校と高校が協力する連携型・併設型はもちろん、最も一貫性の高い中等教育学校が、新潟県、東京都や広島県などで次々と設置された。進学実績を上げることだけが目的ではないが、今後の進路実績によって人気が左右されることは間違いない。

　各県独自の取り組みにも注目したい。地域の課題に応じて、様々な工夫を凝らしている。
　最も目立つのは、特定の高校に財源と人材を配分・配置し、特色の一つとして「学力向上」を推進するケースだ（図表１）。特に都市部の公立高校は、進学率の高い私立高校に学力の高い生徒が流れ、進学率低下に苦慮していた。「公立高校として地域の要望に応えるためにも、学力向上および現役進学率アップという課題に本腰を入れて対策を始めた」（飯塚氏）といえる。
　取り組み内容は、文科省が推進する「スーパーイングリッシュランゲージハイスクール（ＳＥＬＨｉ）」や「スーパーサイエンスハイスクール（ＳＳＨ）」「学力向上フロンティアハイスクール」の地域版ともいえるものが多い。教育委員会が高校から学力向上の計画を募り、数校から十数校選んで指定するという手法が中心だ。

　指定期間は大半の場合２〜５年間で、重点的に予算を配分し、教員を配置し、教育課程を柔軟に組めるよう学校裁量権を与えている。高校は、進学率や大学ごとの合格者数など具体的な数値目標を掲げ、その成果を示すケースが多い。一方で「文武両道」「自律的な進路選択」といった精神面の育成もおろそかにはしていない。進路学習を充実させ、自主的に学ぶ意欲の醸成にも力を入れているのが特徴だ。
　学力向上だけに限らない、いろいろな特色を掲げる高校を指定する県もある。就職率アップや地域貢献など独自の魅力ある高校をつくることで、生徒の多様な価値観に対応し、ミスマッチや中途退学者を防ぐというわけだ。指定されるのは、県内トップクラスの進学校ばかりではない。むしろ、現役進学率が高くない高校が指定を受けるケースが多い。学力向上に積極的に取り組んでもらい、県全体の学力のボトムアップを図る意図があるからだ。そのような高校の中には、特色づくりの結果として進学率が向上したケースもある。
　飯塚氏によると、「特色づくりの活動を通じて、学校教育の活性化につながるというメリットがある。特定の高校に限定する県もあれば、すべての高校を対象とするところもある。考え方は県によって様々」というのが現状だ。