特集
池田輝政

いけだ・てるまさ

九州大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。大学入試センター教授、名古屋大学高等教育研究センター教授、名城大学大学院大学・学校づくり研究科長、同大学教育開発センター長などを経て現職。専門は教育戦略論など。


Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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進研アドシンポジウム開催報告

これからの大学に求められる
教育ブランディング


 進研アドは、6月18日に東京、30日に大阪で、「これからの大学に求められる教育ブランディング」と題するシンポジウムを開催した。学士課程教育への関心が高まる中、どのような教学改革を通して教育力を高め、「教育ブランディング」を行うべきか。
 4大学の経営者の話を基に、両会場合わせて約200人の参加者が、教育によるブランド力向上について考えた。基調講演とパネルディスカッションにおける登壇者の発言要旨を紹介する。

写真
東京会場

基調講演

大学経営層にとっての教育ブランディング

名城大学

池田輝政 副学長・理事

 これからの大学には、戦略的な「教育ブランディング」が求められる。ゴール(ミッション・ステートメント)を定め、戦略プランに基づいて、経営側と教学側が“対話”をしながら大学を運営し、質保証を図るべきだろう。
 2009年2月に、ヨーロッパ実地研究調査のために、欧州大学協会(EUA)と2つの大学を訪問した(『Between』2009夏号参照)。私たちは、ボローニャ・プロセスとは、欧州高等教育圏という市場づくりのための壮大な戦略プランではないかとの仮説を立てていたが、それは正しかった。最も大きなゴールは欧州高等教育圏の形成であり、そのための戦略プランは、学位を比較できる仕組み、学習成果を測定する枠組みをつくり、質保証の文化を育むことだとわかった。
 もう一つ、見えてきたことがある。それは「対話」がキーワードとなっていることだ。欧州高等教育圏は、3つのレベルで構成される。大学レベル、国および地域レベル、ヨーロッパレベルの3つだ。それぞれのレベルで質が満たされてこそ、ヨーロッパ全体の質保証が図られる。これら3つのレベルをつなぐキーワードが「対話」だというメカニズムに、調査を通して気づいた。それが、欧州高等教育圏の実現という壮大な教育ブランディングの姿だった。
 この研究調査は、日本の大学にどのように役立つか。ヨーロッパで得られたヒントを紹介したい。EUAの質改善評価法(IEP)は、「課題は何か」「課題にどう取り組んだか」「取り組みは有効に機能したか」「どのように改善したか」という4つの観点からの自己評価に基づいている。機関の自治能力と戦略的経営能力を強化することが目的で、不可欠な評価ツールとして機能している。経営と教学が目標を共有し、対話を通して、これら4つの観点の問いに答え続けていくような仕組みをつくることによって、教育ブランディングの成果が生まれるのではないか。

4つの問いから生まれる教育ブランディング

─経営と教学の対話とコミュニケーション─

What to do

どんな教育を高い水準にするかという対話

How to do

ヒト、モノ、カネをどこに向けるかという対話

How to work

継続的な支援が効果を発揮することの共有

How to improve

成果に関するコミュニケーションの促進


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