これからの大学には、戦略的な「教育ブランディング」が求められる。ゴール(ミッション・ステートメント)を定め、戦略プランに基づいて、経営側と教学側が“対話”をしながら大学を運営し、質保証を図るべきだろう。
2009年2月に、ヨーロッパ実地研究調査のために、欧州大学協会(EUA)と2つの大学を訪問した(『Between』2009夏号参照)。私たちは、ボローニャ・プロセスとは、欧州高等教育圏という市場づくりのための壮大な戦略プランではないかとの仮説を立てていたが、それは正しかった。最も大きなゴールは欧州高等教育圏の形成であり、そのための戦略プランは、学位を比較できる仕組み、学習成果を測定する枠組みをつくり、質保証の文化を育むことだとわかった。
もう一つ、見えてきたことがある。それは「対話」がキーワードとなっていることだ。欧州高等教育圏は、3つのレベルで構成される。大学レベル、国および地域レベル、ヨーロッパレベルの3つだ。それぞれのレベルで質が満たされてこそ、ヨーロッパ全体の質保証が図られる。これら3つのレベルをつなぐキーワードが「対話」だというメカニズムに、調査を通して気づいた。それが、欧州高等教育圏の実現という壮大な教育ブランディングの姿だった。
この研究調査は、日本の大学にどのように役立つか。ヨーロッパで得られたヒントを紹介したい。EUAの質改善評価法(IEP)は、「課題は何か」「課題にどう取り組んだか」「取り組みは有効に機能したか」「どのように改善したか」という4つの観点からの自己評価に基づいている。機関の自治能力と戦略的経営能力を強化することが目的で、不可欠な評価ツールとして機能している。経営と教学が目標を共有し、対話を通して、これら4つの観点の問いに答え続けていくような仕組みをつくることによって、教育ブランディングの成果が生まれるのではないか。
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