特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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[テーマ2] 現状から大学の課題を探る

大学の意識

質保証に関する大学改革の進捗状況と
IRにおける課題


「質保証を中心とした大学教育改革の現状と課題に関する調査」より

(ベネッセ教育研究開発センター)

大学教育の質の保証は、教育の内容やしくみを構築するための本質的な課題といえる。
2009年にベネッセ教育研究開発センターが全国の4年制大学の学部長を対象に行った調査の結果を基に、今後、大学が取り組むべき自己点検・評価とIRの課題について考察する。

自己点検・評価

実施・継続のための 体制構築とPDCA

 認証評価の前提となる自己点検・評価は、大学の教育理念・目標の達成に向けて、学生の入学・卒業や教育課程の管理が適切に行われているかどうかを確認し、その結果を自己改善に結びつけることが重要である。今後、大学設置基準が厳格化され、認証評価も厳しくなることが予想される。
 自己点検・評価の実施状況は「毎年実施」が46.7%で、実施頻度が低くなるにつれ数値が低くなり、「まだ実施していない」は6.7%である。自己点検・評価を開始した年度は、認証評価制度が始まった2004年前後が多く、「2000.2004年」が30.6%、「2005.2009年」が26.4%となっている。
 自己点検・評価を効率的に実施するには、部門や担当者を置くなど、学内の情報を集約・分析するための組織体制づくりが必要である。自己点検・評価を実施するために全学的な部門を設置しているか、との設問に対し、「①専任部門を常設」が57.2%、「②専任担当者を常に配置」が10.7%と、約7割が部門・担当者を常置している。①②と回答した学部を対象に、常置する際、主導的な役割を果たした人を複数回答で尋ねたところ、「学長」が58.7%と圧倒的に多く、「教学担当副学長(相当役職者)」も38.3%と、トップ層主導で組織づくりがなされている。組織を機能させるうえで、トップ層のリーダーシップの果たす役割は大きい。
 図表1は、情報の収集と自己点検・評価における活用の状況である。

図表1:自己点検・評価で収集・利用している情報

 「日常的に収集して、自己点検・評価に利用」との回答が多いのは、「就職状況に関する情報」「出席状況や退学に関する情報」で、いずれも半数を超える。一方、「企業からの『卒業生の評価』に関する情報」は12.6%と低く、学外者による卒業生の社会的評価は情報収集・活用が未発達段階にあることをうかがわせる。大学関係者の話をふまえると、学外の評価者による客観性の確保が難しいこと、調査対象の選定や方法についての課題が多いことが、情報収集を阻害する要因として考えられる。
 「特に収集していない」との答えが多いのは、「高校教員の評価に関する情報」「高校時代の学習状況に関する情報」などで、入学前に関する情報が突出している。


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