VIEW21 2000.9  新課程への助走
 2003年 新課程カリキュラム作成を考える

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SI(スクール・アイデンティティ)の確立

特色づくりの好機と捉え、新カリキュラムの検討を

 学校裁量が拡大される新課程では、学校の特色がカリキュラムに反映される。そのため、まず学校としてのビジョン、SIを確立することが先決と思われる。そこで、新学習指導要領の基本的なねらいに立ち返り、カリキュラム作りを考えてみたい。


 「'03年度教育課程については、ほぼ6割の学校が'00年度内に検討する」―― これは'00年2月に、ベネッセ文教総研で行ったアンケート調査の結果である。ベネッセ文教総研では、新課程に向けて何らかの取り組みが見られる学校を追跡して調査している。7月現在では、いくつかの素案は作られているものの、カリキュラムが具体的に詰められている学校は少ない。
 新学習指導要領は学校裁量の拡大、単位数の削減が最大の改訂点であり、カリキュラム作成の際には、学校の特色づくりの方向に沿って検討すべき課題が多い。さらに、大学入試も多様化へと向かっており、低学年からの進路学習の重要性は高まっている。新課程でも、大学入試に向けて、多様な学習のニーズを持つ生徒に対する受け皿を用意する必要が生じるのではないだろうか。
 そこで、'03年度カリキュラム作成のポイントを考えていく。

「総合的な学習の時間」を核に、教育活動の見直しを図る

 新学習指導要領の第一の特徴は、学校裁量の拡大を図っていることだ。それは、「総合的な学習の時間」を創設し、各学校が創意工夫を凝らした教育活動を展開できるようになったことや、授業の1単位時間の弾力化、学校設定科目の導入など教育課程・時間割編成における弾力化が図られていることで具現化されている。
 授業の1単位時間の弾力化については、完全週5日制への対応を検討する際に、既に検討を終えている学校も多いようだ。冒頭に述べた調査によると70%の学校で検討が終了しており、そのうち15%の学校で授業時間の変更を予定している。
 今後の中心課題は「総合的な学習の時間」の具体的な内容となる。ここで留意しておきたいのは「総合的な学習の時間」は学校の特色ある活動のベースとなるということである。学校としての教育理念を確立し、それを「総合的な学習の時間」の具体的な活動に反映していく。「総合的な学習の時間」を核に、学校全体の教育活動を見渡したカリキュラムを作成していくことが求められるであろう。

生徒の関心に合わせた選択科目の設定が学校の特色を表すカギ

 第二の特徴は、「ゆとり」ある教育活動を展開する中で、生徒に基礎・基本の確実な定着を図り、個性を活かす教育を充実させるためとして、様々な改訂がなされている点である。
 具体的には、卒業単位数を80単位以上から74単位以上に削減、普通科の必修教科・科目の最低合計単位数を、最低38単位から31単位に削減することなどが挙げられる。さらに、必修科目は複数の科目の中から履修できる選択必修を基本とし、2単位の選択必修科目が新設されている。
 カリキュラム作成に際しては、この弾力化された必修教科・科目を活かして、どのように生徒の興味・関心、能力・適性に応じた教科・科目を積み増していくかが課題となるだろう。それは、この積み増しの部分こそが、学校の教育理念・個性を打ち出す場所と想定されるからである。
 このように、'03年度カリキュラムには学校の理念が色濃く反映されることになる。そのため、カリキュラム作成の際には、まず学校としての教育理念、どういう生徒を育てるために、どのような教育内容を、どういう方法を通して実現していくのか、という学校としてのビジョンを確立することが不可欠だろう。現行課程の調整から入っている学校も多いが、このやり方ではいきおい教科間での“時間取り合戦”となってしまう危険がある。一度、この新課程の主旨に立ち返って検討すると、新たな打開案が生まれてくると思われる。


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