VIEW21 2000.12  特集 変貌する大学と入試

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★第二部 入試が変わる★
どのように変化する? これからの大学入試


高校現場への影響が大きいセンター試験改革案

 '00年4月、大学審議会が公表した「大学入試の改善について(中間まとめ)」では、センター試験についていくつかの大胆な提言が盛り込まれている。例えばセンター試験の成績の資格試験的な取扱いの推進。周知の通り従来国公立大の入試では、センター試験と個別試験との合計点で合否が決まっていた。こういった選抜方法だけでなく、(1)センター試験での得点が一定水準に達しているものを個別試験に進ませ、センター試験での得点は含まずに個別試験のみで合否を判定する、(2)センター試験の成績で段階別にグループ分けし、個別試験ではあるグループは面接のみ、あるグループは論文試験を加え、あるグループはさらに学力試験を課すといった異なる入試を採用する、という案が出されている。
 もう一つ論議を呼んだのが、センター試験の年度内複数回実施だ。これは、大学入試をやり直しのきくものとし、受験生に再挑戦の機会を与えることを目的としたものだ。「中間まとめ」では、12月と1月の2回に渡り、センター試験を実施することを提案している。
 12月実施の理由は、センター試験の成績開示が国公立大個別試験の出願に間に合うよう考慮された結果である。しかし、「中間まとめ」でも認めているように、2学期中の実施は高校の授業や行事に与える影響が大きい。しかも、2回のうち1回は高校側の協力を得て高校で実施することも検討に値するとしており、今後大きな議論が起こると予想される。
 このほか、センター試験で受験生が取った点数を、その年度だけでなく次年度にも利用できる成績の複数年度利用、過去に出題された問題でも良質なものは再利用できるような仕組み作り、教科・科目横断型の総合的な問題や総合的な試験の導入、外国語試験におけるリスニングテストの実施など、数多くの改革案が出されている。これらの提言が与える影響は多大であり、大学入試センター、大学及び高校の間で議論すべき余地が大きい。

個別試験ではセンター試験と異なる能力を判定

 一方で「中間まとめ」では、各大学ごとの個別試験は、論理的な思考力や言語的な表現力の判定に力点を置いたり、難易度の高い問題でセンター試験より高度な思考力、応用力を判定するものとするべく改善が必要としている。入試問題の内容についても、「大学が入学者受入方針として高度な能力を受験生に求める場合もあり、学習指導要領に準拠した上で高度な能力を問おうとする良問であれば、難問であるとの指摘がなされても、一概には不適切とは言い難い」という記述もある。
 また、国公立大個別試験の受験教科・科目数については、個々の大学の教育内容や教育理念を踏まえた適切な教科・科目の設定が重要であり、その結果受験教科・科目数の増加につながることがあってもいいとされている。
 試験科目の増加、難問の容認に加えて、募集単位の大くくり化なども提言された「中間まとめ」。しかしこれらは、週5日制による授業時間の減少、コースの多様化など、高校の今後の方向とは相反する面があると言わざるを得ない。高校の実状を踏まえた議論を進め、納得のいく一致点を見出していくことが求められる。
 そのほかの個別試験の改善案としては、TOEFLやTOEICなどの外部試験の利用、試験問題の作成における外部の専門家の利用、秋季入学の拡大、大学が求める学生を適切に見いだす選抜方法の工夫の一環として、AO入試の推進などの案を出している。

国立大学協会も入試改革案を作成

 ところで9月11日、国立大学協会第二常置委員会は、大学審議会の動きとは別に、国立大受験生についてはセンター試験で5教科7科目受験を義務付ける指針案を発表した。教科・科目の内訳は各大学の判断に委ねる方針だが、原則的には国語、数学、外国語に加え、理科、社会から2科目ずつ課すことを想定している。さらに医学部では、理科を3科目とし計8科目受験とする可能性もあるという。この背景には、学生の基礎学力が低下してきているという危機意識を国立大が抱いていることがある。指針案は11月15日の総会で諮られ、大きな異論はなく合意されたようだ。


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