VIEW21 2001.04  IT Introduction 情報技術が学校をどう変えるのか

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学校のIT活用目標

「分かる」授業の実現が学校IT化の第一の目的

 日本の学校のIT化(情報技術の活用)は始まったばかりであり、教師からは、この新しい設備をどう使いこなせばよいのか、戸惑いの声が聞こえてくる。学校のコンピュータをどのように活用していけば、学校現場の活性化に役立てることができるのだろうか。文部科学省の尾崎春樹氏に学校へのIT導入のビジョンをうかがった。

 '00年度から6年計画で進められている「ミレニアム=プロジェクト『教育の情報化』」では、すべての普通教室に2台のパソコンと1台のプロジェクターを設置することを大きな目標に掲げている。また、全国の小中高の中から大規模な学校8000校を対象に、LAN(情報を通信回線で結ぶ通信網)を整備する計画も進められている。
 既に、コンピュータ教室や進路指導室で、生徒の調べ学習などにパソコンやインターネットを活用している学校は少なくない。特別教室だけではなく、毎日授業を行う普通教室にパソコンとインターネットを整備する目的は何か。文部科学省学習情報政策課長の尾崎春樹氏は、こう語る。
 「普通の授業でコンピュータとプロジェクターを組み合わせて使うことで『分かりやすい授業』を実現することです。副教材として教科書に沿った三次元や動画のコンテンツがあれば、生徒の授業への集中力も高められ、もっと分かる授業に変えられます。コンピュータなら双方向でトライ&エラーの結果を共有できますし、学習素材も世界中から集められ、みんなで共有できます。おそらく、プロジェクターをうまく使いこなせるかが授業にコンピュータを活かすポイントになるでしょう」

コンテンツの充実がIT化成功の鍵

 学校へのIT導入の成功の鍵は、環境の整備だけではなく、ITが日々の授業に役に立つと、教師に理解してもらえるかどうかであり、そのためには副教材として授業に使えるコンテンツ・ソフトウエアの充実と活用法が決め手と言えるだろう。しかし、現在のコンテンツ開発環境は未熟であるため、開発関係者に対して、国からコンテンツ開発のノウハウ・技術の提供が必要と文部科学省は考えている。
 そこで文部科学省では、授業で活用できるコンテンツ・ソフトウエアの開発をバックアップするため、コンソーシアム(協議会)を立ち上げた。現在、17のコンソーシアムがあり、それぞれ教師、学習資源提供者、学識経験者などで構成されている。その中で開発したコンテンツ・ソフトウエアを教師に実際に使ってもらい、教師が抱いた意見を開発者側にフィードバックし、その声をもとに改良するという手順を踏みながら、学校教育用のコンテンツ・ソフトウエアの研究開発が進行している。
 「コンソーシアムの中で、ユーザーと開発者と文部科学省の三者が協力し合って、いろいろと試行錯誤することで、今までにないノウハウが得られると期待しています。それらの成果は、コンソーシアムに参加していない先生方や企業にも公開していく予定です。ただ、デジタルコンテンツそのものは、あくまで副教材として生徒の理解を助けるもの、先生の指導を助けてくれるものです。いろいろな方々の創意工夫、ある意味では自由競争の中から出てくるべきもので、国がこういうものでなければならないと決めてしまうのは間違いと考えています」
 コンピュータの活用はまだ発展していくものであり、ノウハウの蓄積は個人の努力だけでできるものではない。ユーザーと開発者の全国的なネットワークとして、コンソーシアムには、今後、ますます期待が寄せられるだろう。


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