VIEW21 2001.04  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 低学年からの進路指導

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■part 2■ 入学前
学年団で指導方針の共通認識を持つ

 実際に進路指導がスタートするのは入学式後の1年生4月からである。しかし、前段階としての準備を4月までに行っておくと、入学後の指導において大きな意味を持ってくる。進路指導は生徒の顔を見る前から始まっているのだ。
 特に、新任・転任の場合には、自校はどういう学校なのかという学校のSI(スクール・アイデンティティ)を把握しておきたい。学校としての目標、生徒の学力レベル、生活行動レベル、進路状況、地域や保護者からの期待などをもう一度確認し、その中で自校にはどんな進路指導がふさわしいのか、改めて考えることが大切だろう。
 そして、担当学年の進路指導方針を確認する。どんな目標や方針を掲げ、どんな流れで1年間、ひいては3年間を指導していくのか、その根底にある指導の理念を含めて理解、把握しておきたい。
 学校のSIと学年の進路指導の方針、この2点が学年団の共通認識としてあって初めて進路指導は円滑に、かつ十分な力を発揮しながら進む。これらが担任間で共有されていないと、生徒から「あの先生とこの先生では言うことが違う」といった指導への不満が起きる原因になってしまう。
 また、担当するクラスの生徒についても、入学前にある程度の情報をつかんでおきたい。高校入試の調査書などをもとに、学力的な特徴や中学校時代の活動、さらには何か光るものを持っているかどうか、などを把握しておく。
 余裕があれば、生徒の願書を見て、名前と顔を覚えておきたい。入学式後の初顔合わせのとき、担任教師から名前で呼ばれた生徒は驚きと共に、「この先生は私たちに関心を持ってくれている」と一気に信頼感を寄せてくるだろう。

出身中学校の進路指導状況をつかんでおく

 入学してくる生徒の出身中学校の進路指導の方針、指導法なども、事前情報としてつかんでおきたい。中学校での指導は、成績中心か、生き方に関する指導も含まれているのか、職業講演会があったのか、といったことを知っておけば、生徒がどういう進路意識、価値観を持って高校に入学してくるのかを、ある程度つかむことができる。
 また、高校の進路指導との共通点、異なる点が明確になり、出身中学校の指導カラーを念頭に置いて、生徒一人ひとりにふさわしい指導をすることができるだろう。
 情報を入手するためには、学区内の中学校に出向いて校長や進路指導担当の教師から話を聞いたり、資料を分けてもらうのが一般的だ。中学校を訪問している高校なら、その際にお願いするとよいだろう。
 ただし、中学校によっては、指導面の話をしたがらない場合も考えられる。「高校での進路指導に活かしたいので」と目的を伝え、理解を得るようにしたい。
 また、入学後に直接、生徒から中学校でどんな進路指導を受けたのか聞くとよいだろう。指導する側(中学校)の説明と、指導される側(生徒)の視点が、異なることも考えられる。中学校からの情報を鵜呑みにするのではなく、生徒からも話を聞いて総合的、多角的に把握するようにしたい。
 こうして得た情報をデータとして蓄積していけば、3年間の進路指導の際に役立ち、申し送り事項として他の学年が活用することもできる。


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