VIEW21 2001.04  創造する 総合的な学習の時間

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従来の取り組みを「総合学習」として深化させるには

 では、従来から行ってきた進路学習や小論文学習を、「総合学習」でより深化させるとは、具体的にはどういうことだろうか。
 これまでの進路指導は「自分の興味・関心から考えさせる」という手法が多かった。「私は○○になりたい」と決まっている生徒は、その職業に就くにはどんな資格が必要か、学部・学科はどれを選べばよいかなどを調べる。もちろんそれも大切なのだが、このままだと、生徒の狭い視野で進路を考えるため、進路の可能性が広がらないのではという声が先生方から聞こえてきている。すなわち、「今、社会がどう動いているか。その中で自分はどう生きていくか」という広い視野に立って、自分の進路を考える機会がないのではという意見だ。これを「総合学習」では、例えば環境、福祉、情報、国際理解などの今日的な課題を取り上げ、その課題解決に向けて自分はどのような職業や学問で貢献したいのかという形で、社会とのかかわりから自分の進路を思い描かせる、といったアプローチ法も考えられる。
 また、こういった活動では、進路学習に取り組むプロセスの中で、進路情報誌を調べるだけでなく、インターネットや新聞、雑誌を調べたり、体験学習を通して気付きを得るなど、いろいろな手段を駆使することになる。この結果、生徒は情報を取捨選択する能力や、課題解決能力を身に付けることができる。  さらに、進路学習の結果を小論文としてまとめさせ、生徒同士で相互評価をさせる。あるいはディスカッションやディベートをさせるなど、グループ活動を効果的に取り入れると、表現力のみならず、自分と異なる人の意見を聞く力も養える。
 また「総合学習」を、学校行事や教科・科目とリンクさせれば、さらに活動は深まっていく。例えば進路学習を軸に「総合学習」に取り組むなら、修学旅行でも職場・事業所訪問を実施する。文化祭を「総合学習」の成果発表の場とする。あるいは学問研究の過程などで、国際関係学と情報工学に興味を持っていた生徒が、どちらに進むにせよ英語力が不可欠であることを学び、英語の授業を真剣に受けだしたというように、「総合学習」を教科学力アップに結び付けることも可能だ。
 このように従来の取り組みをうまく「総合学習」に深化させられれば、教師に負荷をそれほどかけずに、生徒が興味を持って主体的に取り組める活動にすることができるだろう。

従来の取り組みから「総合学習」への深化
従来の取り組みから「総合学習」への深化

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