VIEW21 2001.09  クラス運営・進路学習のためのVIEW'S method
 選択力を育てる指導

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効果的な取り組みのための手順とポイント

選択力を育てる指導

選択の場で立ち止まる生徒のために

 生徒は今後の人生の中で大きな選択を迫られる場面に何度か遭遇することになる。高校における進路選択もそのうちの一つだろう。ところが、その大事な進路決定で適切な選択ができない生徒が増えているようだ。生徒の選択する力を付けるためにどんな指導が求められているのか、また進路選択に大きくかかわる職業、大学、学部・学科研究をどう進めるべきか考える。


選択力とは何か
選択力を育てる進路指導が今、求められている

 人生には選択を迫られる場面が何度かある。高校生の場合、文理選択、科目選択、受験校選択、職業選択といった、進路学習における様々な選択の場面がそれに当たる。
 近年、そのような場面で主体的に決められない、あるいは選択を先送りする生徒が増えているとの声が聞かれる。文理選択や科目選択で友達の動向や意見なしには自分の進路を決められない生徒、それまでこだわってきた大学・学部・学科なのに、3年次の秋頃には早くも諦めて志望を変更する生徒など。そして、先送り傾向はフリーター増加の一因にもなっているようだ。その場しのぎで、猶予期間をできるだけ先に引き延ばそうとする傾向が感じられる。
 人生の選択に当たって求められるのは決断力だけではない。選択に至るまでには様々な要素、情報収集力、情報処理・分析力、判断力、感性、目標設定力、実践力、適応力、継続力といったものが必要だ。こういった力を最大限に発揮し、主体的に進路選択を行うための総合的な力が「選択力」である。
 もちろん、今の生徒の選択力の弱さは、社会の価値観が多様になり「有名大学から大手企業へ」という人生の図式にリアリティが感じられなくなったことなどが背景にはある。だが、選択力が欠如したままでは、自己の人生に対して自主性、こだわりを持つことは期待できない。
 生徒にとって重要なのは、選択の結果ではなく、決断を下すまでの自己のあり方だ。もし進路選択に失敗しても、主体的に選択した道であれば、その悔いは最小限のもので反省は次に活かされる。だが、そうでない生徒は失敗を周囲のせいだけにし、不平不満を抱えたまま、同じ過ちを繰り返してしまう。

増加するフリーター
グラフ
※労働省(現、厚生労働省)「平成12年版労働経済の分析」より。
*年齢15〜34歳が対象。現在就業している者については、勤め先における呼称が「アルバイト」「パート」で、男性は継続就業年数が5年未満の者、女性は未婚で仕事を主にしている者。現在無業の者については、家事も通学もしておらず、「アルバイト・パート」の仕事を希望する者。

フリーターの数を推計すると、1982年から1997年の間に約3倍に増加。年齢別に見ると、20歳代前半層をピークに減少していくが、近年はその減少率が停滞する傾向が見られる。

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