VIEW21 2002.2  英語教育の新機軸

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表現する中身を培う

福本 「実践的なコミュニケーション能力の育成」を目指した授業は、旧来の授業と特に何が違うのでしょうか。
光岡 コミュニケーション能力を育てるためには、まず、コミュニケーションに足る中身を生徒に獲得させることが大事です。つまり、 "What to communicate" の部分ですね。自分の考えを表現するためには、情報を取捨選択する力、さらに情報をまとめて自分の意見を構築する力、そしてそれを発表する力が必要です。情報を集め、必要なものを選び出して、分析する。つまり情報リテラシーを身に付けさせることも英語科の教師の役目だと思います。その上で "How to communicate" を教えないと、ただの挨拶英語で終わってしまう。
川上 光岡先生がおっしゃったように、生徒に "What to communicate" の部分を身に付けさせるというのは、とても大切だと思います。特に、国際社会で活躍するためには、自分のこと、日本のことを世界に向けてはっきりとアピールする力が必要です。それができなければ、日本を引っ張っていくことはできませんからね。ですから、コミュニケーションの中で「自分は何を発信するべきか」を学べる場を、教師が提供してやることが求められます。これは、英語の授業だけではなく、教科横断型でやるべき取り組みだと思います。
光岡 そうですね。 "What to communicate" を生徒の中に構築させていくことは、英語という一教科だけではできません。他教科、そして「総合的な学習の時間」などと連携しながら、学校全体の取り組みとして指導していく必要があると思います。

国際的な視野を育てる

福本 "How to communicate" だけでなく "What to communicate" を生徒の内面に育てるとなると、生徒にどのような体験を通して、何を学ばせるかがより問われてきますね。現代社会を生きる生徒たちに、我々はどんな感動、気付きを与えていけばよいのでしょうか。
光岡 例えば、ユネスコは全ての教育において扱わなければいけないものとして「環境」「人権」「開発」「平和」「諸民族の権利」を挙げています。まさにどれをとっても、一国だけでは解決できない問題です。世の中にはこういった問題があることを、生徒に授業で気付かせ、グローバルな視点を育てたいですね。
川上 異文化理解とはどういったことなのかも、授業の中で教えていければと思います。以前、私はアメリカと日本の高校生活を対比させた研究授業を行いました。主に両者の違いについて取り上げたのですが、授業の後、ALTに「なぜあんな授業をするんだ」と言われてしまいました。文化の違いだけを強調するのではなく、同時に共通項もあることを教えるのが異文化理解教育である、ということなんですね。正直、ハッとさせられました。違いだけでなく共通する点も含めて広く異文化に目を向け、尊重することで、初めてコミュニケーションが成立するのだということを生徒に理解させたいと思います。

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