VIEW21 2002.2  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

▲目次に戻る

中・高……
ベネッセ文教総研「新しい学力を育むための教育調査」結果報告

「総合的な学習の時間」で育む
「21世紀の社会を生きる力」

 新課程を目前に控え、大半の小・中学校では、「総合的な学習の時間」(以下「総合学習」)を前倒しで実施している。ベネッセ文教総研では、'01年度、小・中学校に対して「新しい学力を育むための教育調査」を行い、現在その結果を報告書としてまとめる作業を進めている。今回はこれまで得られた調査結果を基に、小・中学校の「総合学習」の現状と、そこからつながる高校の「総合学習」の在り方について、大阪教育大・田中博之助教授にお話を伺った。

国際化時代、情報化時代に不可欠な「生きる力」

 「総合学習」は新学習指導要領の柱の一つである「生きる力を育てる」ことを目的として、'03年度から高校でも実施される。しかし、「成果が見えにくい」「そもそも『生きる力』とは何なのか」など、高校現場では不安の声も少なくないようだ。「総合学習」を実施する本当の意義・ねらいとは何か?
 ベネッセ文教総研が小・中学校の教師をサポートするために組織した「新しい学力を育む研究会」の監修役を務める大阪教育大の田中博之助教授は、「総合学習」で「生きる力」を育てることの必要性を次のように語る。
 「21世紀は社会のグローバル化、情報化がさらに進みます。従来以上に『生きる力』、つまり、課題を発見して自分で解決したり、一つの問題を分析してまとめ、プレゼンテーションを行うといった能力が重視されることは明白です。しかし、現在の学校教育ではそれらの育成が軽視されているような気がします」
 実際、イギリスやカナダ、アメリカなどでは、既に知識偏重型教育から脱却し、試行錯誤を経て、現在では「教科学習」と「生きる力」双方のバランスの取れた教育への転換が熱心に進められている。例えばイギリスでは、自分で調べて発表し、討論するような教科学習や、教科横断的な学習が積極的に行われている。ここで目指されているのは「キースキル(Key Skill)」と呼ばれる力であり、日本で言う「生きる力」に当たる。中学校や高校の定期考査では、ペーパーテストに加え、スピーチやディスカッション、パソコン操作の実技テストなどがあり、「キースキル」として得点化される。また、'02年度からの大学入試では、「キースキル」が評価に含まれることが、すでに決定している。
 このように、今や「生きる力」の育成は世界的な潮流であり、国際社会を生き抜く上で不可欠な力として認知されている。


写真
大阪教育大助教授
田中博之
Tanaka Hiroyuki
大阪教育大教育学部助教授大阪教育大専任講師を経て現職。著書に『総合的な学習で育てる実践スキル30』(明治図書)ほか

次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.