VIEW21 2002.6  コミュニケーション新時代
 生徒との時間をより大切にするために

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学校の外に目を向けた
ダイナミックな取り組みで、
子どもの能力を大きく伸ばす

 「子どもを伸ばす授業」の重要なキーワードの一つはコミュニケーションであろう。教師と子ども、子ども同士、あるいは学校と外部のコミュニケーションの在り方と内容が教育の成果を大きく左右する。今回は、平福小学校と宮竹中学校の取り組みを通して、このテーマを考えてみたい。


岡山市立平福小学校のケース
学校外のヒューマンネットワークを活かして
画期的な成果を上げる

遠隔地の子どもとの共同研究活動で、
『米米ワールド』を出版した!

 岡山駅から南へ約6キロ、旭川が流れる住宅地の中にある岡山市立平福小学校。
 「ごく普通の小学校ですよ。でもこの4月、私が担任を受け持った6年B組と、東京にある江東区南砂小学校の6年1組の児童計60名が、1年弱にわたり“米”について共同研究を行い、その成果を『子ども米レンジャーと旅する 米米ワールド』という本にして出版しました」。こう語るのは三宅貴久子先生。この400ページ近い単行本の「著者」には、両校の60名の子どもたちの名前が連なっている。
 元々は、家庭科での課題がきっかけとなり、子どもたちから「自分たちでお米を作りながら、お米のことを見つめていきたい」という意見が出て、グループ別に様々な研究がスタートした。稲作の歴史があれば、休耕田の話題もある。世界に分布する米の品種も研究テーマになった。奇遇にも、三宅先生の知り合いである伊藤秀一先生(東京都江東区立南砂小学校)のクラスでも、教科学習と関連したお米の学習に取り組んでいた。お互いの学級の研究成果を交換して子どもたちに見せたところ、「東京と岡山では、同じ事柄に関しても感じ方や考え方が違うんだ!」と子どもたちが気付き、お互いに刺激を受けたという。そこで、両学級が協力して一緒にお米について調べようという展開になった。
 「子どもたちは、インターネットを自由に使ったり本で調べたりしながら、自主的に調査を進めていました。遠く離れた南砂小学校の児童とは電子掲示板を使って双方向のコミュニケーションをとりながら共同研究の作業を進めていきました。相手の書き込みに対して、自分の調べた結果や意見を返す。相手もそれについてさらに調べ、意見を返すというプロセスの繰り返しでしたね。時には、大型モニターを利用した遠隔授業も実施して、お互いの顔を見ながら情報交換をすることもありました」
 岡山−東京両校の児童がチームを組んで、相互に意見を交換し合って完成させていく。そのプロセスの中で児童たちは、学ぶこと、学び合うことの面白さを実感していったのである。
 「本を作るに当たっては、子どもたちはA4で10枚程度にもなる原稿を、全員がパソコンを使って書き上げました。中には40枚もの原稿を書いた子どももいます。パソコンでイラストを描いたり、数字のデータをグラフ化して原稿に組み込んだ子どももいました。なかなか作業が進まず、仲間に励まされながら作業をしていた児童もいましたが、全員が最後までやり遂げましたね」
 こうしたことができたのは、普段から子どもが何かやりたいと思ったことは必ずワープロで企画書を作成させて、自分の考えをまとめ表現する力を身に付けさせていたことがその要因の一つにあると三宅先生は考えている。

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大型モニターを使った授業の様子(写真上)と、『子ども米レンジャーと旅する米米ワールド』(高陵社書店刊)(写真下)



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岡山市立平福小学校教諭
三宅貴久子
教職歴24年目。同校に赴任して8年目。「外界に積極的にかかわり、より良い社会の創造へ向けて、自分なりにアクションを起こせる子どもを育成したいです」

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