ベネッセ教育総合研究所
特集 自学自習力の育成
PAGE 8/20 前ページ次ページ


生徒を自学自習にいざなう3つの視点
生徒の自学自習力を根本から伸ばすには、学習指導を改善するだけでは不十分と言える。
高校現場がさらなる活動の改善を進めるには、どのような取り組みが求められるのだろうか。
インタビューの内容を踏まえると、次の3点が重要と思われる。

1 生活指導の意義を再確認する
 自学自習に向かう生徒は生活習慣が確立している――。この点を再確認することがまず求められる。現在、多くの学校は遅刻指導、服装指導といった形で生活指導を実践しているが、そうした活動は、単に生徒の品位向上のためだけに行われるのではない。むしろ、生徒に自らの生活を正す力=自律力を身に付けさせるためにこそ行われているのではないだろうか。
 生徒が自律した学習者となるためには、「自分で立てた学習計画をきちんと実行する」「目標実現のために何をすべきか判断する」といった形での自律力の発揮が不可欠となる。学習指導と生活指導が表裏一体の関係にあることの意義を、改めて確認する必要があろう。


2 動機づけの手法を再評価する
 自学自習に向かう生徒を育てる=内容関与的な動機づけ(※1)を行う、という発想は正攻法的なアプローチと言える。しかし、こうしたアプローチは生徒の発達段階がある程度の水準に達していないと効果を発揮しにくい面がある。生徒の気質、学校の置かれている状況を把握した上で、学校全体の雰囲気づくりや教師との関係づくりを軸にした内容分離的な動機づけ(※2)の効果も再確認することが重要である。例えば「受験は団体戦」といったスローガンで生徒の意識を喚起する、面談や掃除での声掛けで生徒との接触機会を増やすといった取り組みを改めて見直したい。
※1内容関与的動機 ※2内容分離的動機
学習動機の2要因モデル
 さらに、内容関与的な動機づけについても、従来よりも広い視野で捉え直す必要があるだろう。進路意識や知的関心の触発を狙った取り組みというと、「総合学習」や進路講演会の実施などが挙げられるが、生徒を学習に向かわせる上で何より効果的なのは、授業が知的関心を触発する場となっていることではないだろうか。特定の活動に捕らわれず、動機づけの機会を既存の教育活動の中に見いだしていくことが求められるだろう。下図で示したのは次ページから紹介する高崎高校の取り組みの概念図であるが、学校活動のあらゆるシーンにバランスよく動機づけの機会が盛り込まれており、生徒の意識改革を早期に促し、自律的な学習者を育成するための仕掛けが見られる。
高崎高校の教育活動における「動機づけ」要素


3 モチベーション開発のビジョンを持つ
 学校としてしっかりとした、生徒のモチベーション開発のビジョンを持つことも重要であろう。例えば、「1年次は内容分離的な動機づけにより、ともかく学習に向かう習慣を付ける→2年次から、内容関与的な動機づけに基づく学習に転換させる→3年次は進路学習の成果を踏まえ、進路実現の視点から学習モチベーションを高める」といった具合にである。その際には、単にビジョンをまとめるだけでなく、後出の川越高校のように、「内容分離的動機づけから内容関与的動機づけに生徒を転換させる取り組みは何か」といったレベルまで、教育活動個々の意義を明確化することが重要である。
 こうした見取り図を「総合カリキュラム」等の形で明文化できれば望ましいと言えるが、さらに、生徒に開示できる形にまで整理できれば理想的だろう。教育活動の目標を体系的に生徒に伝えることは、生徒が主体的にそれらを捉え、自律的な学習力を高めていく上でも有効であろう。


PAGE 8/20 前ページ次ページ
トップへもどる
目次へもどる
 このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
 
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.

Benesse