ベネッセ教育総合研究所
特集 広報が学校を活性化する
小松 郁夫
ikuo komatsu
こまつ・いくお
1947年生まれ。東京教育大大学院博士課程満期退学、東京電機大理工学部助教授、英バーミンガム大客員研究員、国立教育研究所教育経営研究部部長等を経て現職。学校経営学、比較教育学が専門。「都立学校評価システム確立検討委員会」委員、「かわさき教育プラン策定委員会」教育行政部会長、日本教育経営学会及び日本教育行政学会理事、英国教育経営行政学会国際編集顧問などを務める。
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地域への広報活動が教育向上をもたらす

 ともすれば一方通行になりがちな学校の広報活動。しかし、その過程で見えてくる様々な課題を解決することは、より良い学校経営にもつながる。どのように地域の要望を吸い上げ広報活動に生かすか、広報活動を効果的に行うにはどうすればよいのか――。国立教育政策研究所の小松郁夫氏にお話しをうかがった。
国立教育政策研究所 高等教育研究部部長
早稲田大大学院教育学研究科 客員教授

小松郁夫


広報活動は自校の取り組みを見直す絶好の機会
――近年、公立高校においても中学校や保護者、地域に向けた広報活動に対する関心が高まってきました。高校現場で広報活動が求められる背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
 次の三つの点が指摘できると思います。一つ目は、社会的な要請からアカウンタビリティ(説明責任)が強く求められるようになったこと。公立高校は税金で運営されている以上、その効果を具体的に納税者に示していかなくてはいけません。二つ目は、少子化などにより高校間で生徒の奪い合いが激しくなってきたことです。地域によっては、学区再編が行われたり、私立高校の人気が高い地区もあり、公立高校と言えども積極的に広報活動をする必要が出てきました。三つ目は学校活性化の視点で、これが最も重要です。広報活動を行うに当たって、自校はどういう高校なのか、どのような生徒が来ているのか、学校の現状把握と課題整理を行うことで学校改革につなげることができるのです。
――まず、自分たちの活動を顧みて直すべき所は直す、他校と比較して強みがあればそれを伸ばす、ということが広報活動を通じて期待できるわけですね。
 広報活動と言うと単に「入学生確保のため」と思われがちですが、それを通して教師や学校が変わることができる点に最大のメリットがあるのです。それまで漠然と感じていた問題点を明らかにすることで、改善策が見えてくる。ですから広報活動でまず大切なことは、各校が自己診断をすることです。診断結果を基に、「3年後の生徒の育ちの姿」を見据えた目標設定を行い、それを地域に発信して理解を求めていくのです
 自己診断のための情報収集には、日頃の教育活動で感じている課題を教師から吸い上げる方法もあるでしょう。また、中学校や保護者にアンケートを実施したり、日頃自校の生徒と接する機会の多い地域の人々に意見を聞いたりして、何が求められているのか、足りないのかを把握することもできます。
――自己診断、目標設定のポイントは?
 中学校や保護者が知りたい情報、すなわち学習・進路面と生活面にポイントを絞ります。学習・進路面は、入学試験の結果や日々の学習活動の成果を基に、卒業時にどのレベルまで引き上げるかを見通し、戦略・戦術を立てる。生活面は、遅刻の減少、健康管理の強化、コミュニケーション力の伸長など、生徒の実状に合った目標を設定した上で、ホームルームを工夫する、部活動への加入を促すなど、具体的な取り組みを策定していけばよいでしょう。 
 広報活動を行うに当たって、他校との差別化に悩んでいる学校も多いかと思いますが、自己診断、目標設定をすることで自ずと学校の特色も見えてくるのではないでしょうか。
広報活動が求められる背景


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