ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 富山県立富山南高校「進路学習」
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生徒主導で運営させることで主体性を養う
 「進路探訪」の実施に当たって、同校が強く意識している点の一つは、生徒が主体的に取り組みに加わり、一人ひとりが目的意識を持って参加できるように配慮していることである。
 例えば1年次の懇談会では、講師への質問事項を生徒たち自身が事前に考え、当日の分科会の進行も生徒が務める。研修旅行では、訪問先の情報を調べたり質問事項を考えたりすることはもちろん、OB・OGのいる大学、企業の場合は、相手との細かな事前打ち合わせまでの多くを生徒に任せる。訪問時の挨拶、事後のお礼状の作成も生徒の仕事だ。昨年度の研修旅行を主導した現3学年主任の尾崎秀一先生は、研修旅行に際して、引率の教師には次のように依頼した。
 「担当の先生方には『極力、生徒の先頭には立たないようにしてください』とお願いしました。教師が先回りして指導すると、かえって生徒の自発性を損なうことになりかねません」
 もう一つ、「進路探訪」で意識されている点は、取り組み終了後に必ず報告書を書かせることだ(図1)。これは「進路探訪」の裏メニューとも言えるもので、大学入試の小論文試験対策を見据えたものだ。
図1
同校発行の冊子「進路探訪を終えて」より抜粋。新聞社の業務が簡潔にまとめられている上、企業活動の一端に触れた体験を通して、勉学にも新たな意欲を喚起された様子がうかがえる。
 「本校に限らず、近年の生徒は書くことを非常に面倒がります。『進路探訪』が、結果として小論文を書く力の向上につながればと思いました。『進路探訪』の取り組みはもちろん、講演会など行事の度に書く習慣を付けさせただけあって、生徒の間で文章を書くことに対する抵抗感はなくなりましたね。今では800字の文章も1時間程で書いてしまいますよ」(尾崎先生)
 さらに小野田裕司校長は、「書くことで考えが深まり、『進路探訪』等での生徒の取り組みに一層の効果をもたらす点も見逃せません」と指摘する。
 「本校の校訓は『自ら学び 思い 律する』です。学んだ後に『思う』ことが大切で、ただ体験したり、覚えたりするだけではなく、文章にまとめてみるなどして、体験を見つめ直す行為があって初めて、体験や学習がその人の成長の糧になるのです。03年度より指定を受けているSELHiにおいても研究開発課題として、『自分の考えを明確に持ち、それを英語で正しく表現し、伝えることができる能力の向上』を目指しています。つまり、学んだことを自分なりに消化することで、英語以外の場面でも自己表現能力を高められるよう指導しているのです」


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