ベネッセ教育総合研究所
私の思い 教育の原点は人づくり、人づくりの原点は食にある
井場 宏晃

兵庫県立小野高校校長
井場 宏晃
Iba Hiroaki
生年月日●昭和19年11月9日
出身地●兵庫県小野市
趣味●ゴルフ、テニス、読書、スポーツ観戦
座右の銘●継続は力なり

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私の想い 2
教育の原点は人づくり、人づくりの原点は食にある


最近の高校生のマナーについては目に余るものがある。食べ歩き、電車内のマナーの悪さ、コンビニの入り口でのジベタリアン、自転車の二人乗り、制服の着こなしの悪さ等々……。
 原因はいろいろあると思うがその一つに「食生活の乱れ」があると思う。
 現在の日本の食事情は、あり余る飽食時代。食べようと思えば、どこでも昼夜の区別なく四六時中好きな食べ物が求められる。
 しかし、最近の生徒は豊富な食事情でありながら、食事が用意されていないとか、毎日同じ内容の食事ばかりといった親の手抜きが原因で、「食不足で礼節を知らず」「食生活の乱れで知力・気力・体力なし」が多くなってきている。これでは健康も礼儀も知力・気力・体力も低下する。歪んだ食生活は、すぐにではなくても、5年、10年経って必ず体に変調を来してくるものである。ある寮で、寮母さんが食事を作るのに、野菜を切る道具を購入したら、寮生たちの行動に落ち着きがなくなった。原因が分からなくて悩んだ末、元通り手切りにしたら元の落ち着きを取り戻したという話を聞いたことがある。
 食不足や食生活の乱れは、発育・発達面では身体的にも精神的にもいろいろ影響を及ぼすので、生徒の思考や生活行動がますますすさむ危険がある。
 医学的には、栄養不足あるいは低栄養食品などの食生活が続くと、必要な栄養素が不足するために、脳の機能障害が起こり、臆病的・内向的言動・注意散漫・社会性の低下・耐性力低下・欲求不満・記憶低下・攻撃的・衝動的行動等の行動障害及び学習低下などが発症すると言われている。また、大脳生理学でも栄養の不足や乱れは大脳活動に大きく影響すると言われている。
 実際に学習成績と食生活の関係を見ても、1日3回の食事が毎日満たされていない者は、それが満たされている者と比べると成績が低い傾向にあるという。朝食を食べなかった場合、午前中の記憶力及び集中力、学習意欲は、食べた場合と比べると確実に下がる。欠食すれば学習成績が低下するのは当然のことである。

食卓は単に空腹を満たすだけでなく、他人を思いやる心や社会性を育てる場、コミュニケーションを交わす場であり、そして、さりげなく愛情を伝えることができる場でもある。手抜きの食事や歪んだ食生活は、将来、必ず体だけでなく心の栄養不足を招くことになる。
 社会的・文化的水準がいかに高くなろうと大人の手抜きがあっては、健全な生徒は育たない。お互いに忙しい毎日であるが、料理は食べ物を味わうと共に、愛情を食べさせるものだから、気持ちよく食べる、家中で一緒に食べる。話題を豊富にして、みんなで食事の雰囲気を大切にしたいものである。



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