ベネッセ教育総合研究所
特集 進路学習の深化を探る
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1年 「将来を真剣に考える姿勢を養うこと」を重視した職業研究
 「総合的な学習の時間」を中心にして実施される同校の進路学習は、1年4月の「職業研究」からスタートする。このアプローチ自体は全国の高校が取り組んでいる進路学習においても一般的なだけに、1年次に将来就きたい職業を、2年次以降はその実現に向けた学部・学科研究などを通じて進学先を検討させる、といった指導の流れが考えられる。だが、同校の教師たちは、職業研究の意義を、それとはまた違った観点から捉えているようだ。伊藤明先生は、職業研究に対する同校の考え方を次のように説明する。
 「職業研究に取り組むことは、生徒が自分の進路を考える機会として確かに有効です。本校でも、以前であれば教科の好き嫌いで文理選択に臨む生徒がほとんどだったのですが、最近は『将来○○を目指したいので文系に進みます』と将来の『なりたい自分』を念頭に置いた考え方をする生徒が多くなってきました。ただし、1年次という生徒の発達段階を考えると、この時点で、高校卒業時の進路希望と直結した職業を決定させるのは不可能だと思います。むしろ、この時点では、『自分の将来について真剣に考える気持ちを高めること』にこそ職業研究の意味があるのではないかと思います」
 同校では、文理選択を、1年次の6月と10月、11月末の3段階に分けて実施しているが、以上のような職業研究のコンセプトを踏まえ、職業研究の最終的な結果発表の場である「職場訪問報告会」を、3回目の文理選択直前の11月上旬に設定している。職業研究を通じ、真剣に将来のことを考えようとしている同級生の姿を目の当たりにすることで、今一度、将来の進路への視野を広げ、文理選択に向けて自分の気持ちを見つめ直す「揺さぶり」の機会とするためだ。
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 「ここでの決断は長い目で見ればあくまでも仮決定にすぎません。しかし、報告会後の文理選択は、卒業後の進路選択に向けた大きなステップですから、他の生徒の発表に耳を傾けるよう伝えています。実際、『職場訪問報告会』の後、自分の文理選択の在り方を改めて考え直す生徒も少なくありません」(伊藤先生)


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