ベネッセ教育総合研究所
特集 導入期の集団づくり
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学校生活への適応を第一とした上で生徒に自信を持たせる
 では、導入期に教師が心掛けるべきことは何なのだろうか。渡辺教授は続ける。
 「導入期において最も重要なことは、生徒が自分の入学した学校に積極的に適応できるようにすることです。適応するとは、学校を自分の居場所と感じられるようになることです。理由や経緯はどうであれ、全ての生徒が学校を好きになり、その学校の生徒となった自分に誇りを感じ、自分に対して自己尊重感(注)を感じられることです。そのためには、教師自身が自分の働く学校の良さを自信を持って生徒たちに示したり、生徒一人ひとりの存在を大切にしていることを言動を持って示すことが必要です」
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注)自己尊重感とは、自分自身をとても大切な存在だと感じられること。先生、仲間との信頼関係をつくることで、自己尊重感を持つことができる。自己尊重感は自信へ、自信は学習意欲や職業意欲へとつながり、それによって自己尊重感や自信が更に深まっていく。
 こうした生徒の自己尊重感が、自信の基礎となるのだという。また、生徒に自信を持たせるために次のような指導が考えられると語る。
 「学校生活の中で自信を育てるためには、日々の学校生活の中で、生徒に達成感を与える機会を多く作ることです。例えば宿題を出したらきめ細かく先生が達成度を確認し、できたことを評価するなどといった方法が効果的でしょう」
 自己尊重感も自信も他者との関係の中で経験できる感情であり、それを通して、自らを客観的に見つめることで現実的な力になる。つまり、教師から認められ努力が評価されることで、学習意欲や自己効力感へとつながっていく。導入期は生徒にとって疑心暗鬼の時期でもあり、教師の方から生徒に目を掛けていくことで信頼関係を築くことが、その後の諸活動での指導のために重要であると語る。
 「最近注目されているキャリア教育とは、まさに中学から高校への移行期が困難な時期であると同時に、その後の学校生活にとっての重要な土台となることを再認識させるものです。キャリア教育は将来の職業を決めさせることではありません。将来、自立的に生きられる人となることを目指して、今という時間の意味を認識しながら学習の意義を理解し、学校での学びの体験を将来につなげられるようになることを助ける教育的な理念です。学習する意味が見出せれば、教師の指導の下で、自己効力感を高めることができるでしょう。自己効力感を持つことができれば、たとえ最初の目標が実現できなかったとしても、挫折することなく新たな目標を設定することが可能になります。これは生徒にとっても教員にとっても非常に意味があることではないでしょうか」


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