ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 工学部教育の変化と工学教育・研究の展望
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他学部に比べて低い工学系学部の学生満足度
 医療系学部に比して不人気傾向にあると言われる工学系学部だが、工学部に入学した学生の満足度はどの程度だろうか。
 図3はベネッセ教育総研で04年2〜5月に実施した「大学満足度調査」の結果である。
図3
工学部在籍の2〜4年生によると、「講義が面白くない」「教員との交流が少ない」などの項目で肯定率が高く、工学部進学後の大学教育に満足していない様子がうかがえる。実際に、医・薬・看護系学部との比較においても満足度は低い傾向にある。こうした背景には、工学部の「基礎工学」の基盤となる講義の多くが、比較的収容定員が大きく座学中心であるため、学生一人ひとりに対する「学び」のケアが薄くなりがちという点も挙げられる。そのため、授業の魅力が学生に伝わりにくいといった要因が考えられる。
 以上、工学系教育を巡る課題を整理してみたが、このような課題を踏まえて、工学系教育・研究の現場では急速な変化が起こっている。例えば、本誌04年10月号で紹介した金沢工業大の「工学設計教育とその課外活動環境」(GP認定※1)は、学生自らが問題を発見・解決するプロセスを通じ、自立的に学ぶ力を身に付けていく教育プログラムであった。
※1 「GP」は「グッド・プラクティス(優れた取り組み)」の意味。大学の教育改革の一環。政策課題に対応したテーマ設定を行い、特に優れた教育プロジェクトを選定する。
このように、学生に魅力ある教育体系や授業改善の動きは、近年課題意識を持った工学系学部・大学で盛んになりつつある。また、科学研究開発費、COE認定事業など、多額の競争的資金が工学系の優れた研究領域に配分されており、多くの大学で最先端の研究が行われているのである。
 以上より、これからの高校における工学系分野の進路選択では、工学教育への期待、将来性をしっかり見極めていく必要がありそうだ。そこで、工学系分野の現状と先端工学の行方、大学進学後の実際と社会関与の可能性の一端を当レポートで紹介したい。

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