ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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特集 高大連携の未来形
課題整理
今後の高大連携はどこへ向かうのか?

「高大連携」の必要性が叫ばれるようになって久しいが、その先の新たな教育の形はまだはっきりとは見えていないのが現状だ。 文部科学省初等中等教育局勝野頼彦氏の知見を基に今後の高大連携の在り方を「双方向性」の観点から読み解きたい。


1 従来型の高大連携
 近年、多くの高校では、生徒の進路観育成、大学進学に向けた動機づけを狙って、大学と連携した取り組み(出張講義や出前講座等)を行っている。高校における教育活動の一部を、「高大連携」という手法が担っていると言えよう。
 現在、高大連携の取り組みは、全国的に広がっており、その目的・形態・手法は多様である(図1)。
図1
わずか数年の間に、高大双方が急速に連携を深めつつあることがうかがえる。
いわゆる、「説明会」型の取り組みのみならず、講義の受講や単位認定など、
学習面での接続が進みつつあることが特筆される。
 そこで、高大連携の取り組みの現状を、「従来型の高大連携」と「新しい高大連携」という二つの観点で整理しておきたい。
 「従来型の高大連携」とは、「高校生の進路学習の一環として、大学の教育資源を(講義・講演等で)活用する取り組み」である。例えば、(1)大学での通常講義の聴講、(2)高校生対象の講義・講座への参加、(3)体験入学やオープンキャンパスへの参加、(4)大学での実験・実習や個別指導など、一般的に知られている取り組みの多くが当てはまる。従来型の取り組みの多くは、生徒の進路意識の醸成を目的とした「高校の進路指導ストーリー」に位置付くものであり、そのためのツールとして大学の教育資源を活用しているのである。当然、取り組みの主体は「生徒」であり、「高校生が」大学に通学したり、あるいは、高校内にて大学教員から模擬講義を受ける形となる。生徒の意識触発を狙った取り組みであるが、高大連携を見据えた体系的な学力・意識形成を意識したものは少ないようだ。
 これらの取り組みは、大学内外の観点で次のように分類できる。
■大学内における取り組み
 大学における講義の聴講(大学主催型)や、大学の研究室訪問、実験・実習等(高校からの申し出型)が該当する。
  大学主催のものは、通常の講義のように専門性が高いものから、体験入学やオープンキャンパスのように、大学紹介や大学生活の体験に力点を置いたものまで、内容的に多岐に渡っている。研究室訪問等では、大学の最先端の研究内容や施設・設備を体験する内容のプログラムが多く、比較的高度なものも含まれている。
■大学外における取り組み
 大学主催の公開講座や、大学の教員が高校に出向いて行う講義・講演会、大学説明会等が該当する。出前型の講義は、最も普及している実施形態であるが、大学との接点は単発型のものが多く、最先端の学問の一端に触れるといった入門的性格が強い。大学の教員が、高校の進路学習や総合学習の指導に部分的に協力するなどの取り組みも、このタイプに含まれる。


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