ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
酒井正三郎
中央大商学部長
酒井正三郎
Sakai Shozaburo
1950年生まれ。中央大大学院商学研究科博士課程退学。中央大助手、助教授を経て現教授。日本経済学会連合評議員。
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中央大
実践事例
高大の教育の連続性を明確に見据えた
接続教育を実施

進学に向けた動機づけ」という次元を超えて、「教育の連続性」という長期的な展望に立った高大連携を模索する動きが、各地の高校・大学で始まっている。中央大商学部とその提携校、群馬大と周辺高校のケーススタディから、高大連携の今後を探りたい。


 
学習面の接続にまで踏み込んだ先進的な取り組み

  公認会計士資格の高い合格実績で知られる中央大商学部は、夜間部の廃止を伴う00年度の学部改組を機に、高大接続を狙った様々な施策を打ち出している。大学の授業を高校生向けにアレンジして提供する「キャンパス・インターンシップ(CI)・プログラム」、科目等履修生制度を活用し、学部の授業を通年履修する「Higher Education チャレンジ・プログラム」、中央大学商学部への進学を目指す都立高校の3年生をゼミ形式で指導する「東京コラボレーション(TC)・プログラム」などを実施。更に、推薦・特別入試で合格し、手続きを済ませた高3生を対象に、基礎的な英語力、文章作成能力を身に付けさせる「プレ―スチューデント(PS)・プログラム」など、自学への入学予定者を対象とした、「入学準備教育」にも取り組んでいる(図1)。
図1
 高校生に大学の授業を開放する授業聴講などの取り組みは他大学でも数多く見られるが、学習面の接続に踏み込んだ事例は全国的にはまだ少ない。商学部長の酒井正三郎教授は、一連の取り組みの背景を次のように語る。
 「00年度の学部改組に向けて、教授会で議論の焦点となったのは、学力低下、学習意欲の低下等に象徴される新入生の気質の変化でした。しかし、その対応を高校現場に押し付けていても学部教育の改革は進みません。そこで本学部では『生徒たちが大学教育にソフトランディングできる効果的な接続教育があってこそ、大学教育は機能し得る』という観点から、実効性のある接続教育を実施することにしたのです。学部教育の前提として、接続教育を必須のものと捉え直したと言ってもよいでしょう」
 このような意識を中央大学商学部の教員たちが共有するきっかけとなったのは、98〜99年度にかけて実施した高校現場へのヒアリング調査であった。中央大学商学部の教員は総勢100名余り。そのほとんど全員が手分けをし、全国168校の高校にヒアリングに赴いたのである。
 「ヒアリングの結果浮かび上がってきたのは、我々が想像していた以上に、高大の学習内容や学びのスタイルのギャップが大きいことでした。『今のままでは授業が成立しない』という危機感を多くの教員が感じたからこそ、本学部では接続教育の実施に向けたコンセンサスが得られたのだと思います」
 では、実際に中央大学商学部ではどのような接続教育を実施しているのだろうか。主な取り組みについて見ていこう。


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