ベネッセ教育総合研究所
特集 保護者と「共育」する学校づくり
重松清
重松清
Kiyoshi Shigematsu
1963年岡山県生まれ。早稲田大教育学部卒業後、出版社勤務を経て文筆活動へ。99年『ナイフ』で坪田譲治文学賞、『エイジ』で山本周五郎賞、01年『ビタミンF』で直木賞を受賞。教育にも深い関心を持ち、教育関係者との対談集『教育とはなんだ』を上梓する他、教科書や教材の策定にも携わる。その他にも小説『日曜日の夕刊』『トワイライト』、ルポルタージュ『世紀末の隣人』『お父さんエラい!』など著書多数。
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特集 保護者と共育する学校づくり

小説家 重松 清

教師の顔が見える情報開示が「共育」への第一歩

  小説家として『エイジ』『ビタミンF』などの秀作を次々と発表し、「家族の葛藤」を描き続ける重松清氏は、中学生と小学生の2人の娘を持つ2児の父親でもある。保護者としての立場から教育についても深い関心を持ち、教科書の編集に携わったり、教育関係者との対談、家庭をテーマにした講演会など、活発な活動を繰り広げている。そんな重松氏に、保護者が学校に求めるもの、生徒を「共育」する視点について聞いた。


損得勘定で考えるようになった現在の保護者
―まず、近年の保護者の意識についておうかがいします。学校に対する保護者の意識に変化はあるのでしょうか。

 ここ30年くらいの間に、多くの保護者が「損得」で物事を考える傾向が強まったように感じます。「ゆとり教育で教わったうちの子は損をした」とか「合わない担任に当たって損をした」とか。
  また、どんな名門校でも時代によって大学進学者数の増減があるものですが、損得勘定の上に立って、常に全盛期の実績を基準にして学校に様々な要求をする保護者も多いですね。現場の先生にとっては辛いと思います。加えて、小学生の保護者は小学校の話、中学生の保護者は中学校の話にしか興味がない。高校の実態については高校受験の前に初めて知るわけです。しかも、その情報はみんな高校が与えてくれると思っている。

―だからこそ、高校側は情報を開示する必要があると。

  高校側が情報を出すだけでなく、保護者の方も「我が家の価値観はこうだよ」っていうのを持っていなくてはいけません。それが高校側のビジョンとうまく合致すれば、最高のカップリングになるわけですから。
  例えば「うちの学校はイベントばかりです。浪人は多いけれども、忘れられない高校生活が送れます」という高校があったとしても、「現役でちゃんといい大学に入ってほしい」と思う保護者は最初から子どもにその学校を薦めはしないでしょうし、「それが青春だよな」と思う保護者は学校に協力しようという気になるでしょう。そのためにも、保護者は我が子の幸せとは何かを常に考えなくてはいけないし、高校も自校の生徒の幸せを考えなくてはいけない。本当の「共育」というのは、そこから始まるのではないでしょうか。


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