ベネッセ教育総合研究所
高大連携の新たなフォルム
山本啓司
岡山大理学部長
山本啓司
Yamamoto Hiroshi
地元高校との高大連携のプログラムを推進。02年度の岡山県立岡山一宮高校のSSH指定以降、その運営指導委員会議長を務める。
柳澤康信
愛媛大理学部長
柳澤康信
Yanagisawa Yasunobu
SSHの愛媛県立松山南高校の指導にオブザーバーとして参画。05年度より愛媛大スーパーサイエンス特別コースのコース長を兼務。
倉光成紀
大阪大大学院理学研究科教授
倉光成紀
Kuramitsu Seiki
大阪教育大付属高校平野校舎吉本和夫教諭との連携プログラムを96年度より実施。SSHの大阪府立北野高校の活動にも関与。
小川正賢
神戸大発達科学部教授
小川正賢
Ogawa Masakata
科学教育が専門。理工系人材開発が最近の研究テーマ。科学教育の在り方について、日本科学教育学会会長としても発信する。
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第3章
SSHが築く高大連携の新たなフォルム

 第2章でも見てきたように、SSHの学校では、高大連携を取り入れながら、実験・観察、分析、発表などを伴う、探究型の学びを取り入れた実践がなされた。こうした高校の動きを大学はどう捉えているのだろうか。本章では大学が、高校との連携、接続の在り方をどう考えているか、その目指す形を探っていく。

大学人座談会
大学はSSHをどう評価しているのか
高大連携の経験を踏まえた、大学の今後の在り方を考える
 SSH指定校では、様々な形で大学との連携が試みられた。その受け手となった大学は、こうした高校の動きをどう捉えているのだろうか。高大連携の試みを実践してこられた3名の先生と、科学教育を専門とする先生にお集まりいただき、今後の高大連携の在り方と、実践を踏まえての大学の動きを共に考えてみた。

生徒から感じる高大連携の確かな手応え
――SSHにおける大きなテーマの一つが高大連携による人材の育成です。まず最初に、高大連携の取り組みの現状からお聞かせください。

倉光 大阪大理学部では、大阪教育大教育学部付属高校平野校舎との連携による公開実験授業、大阪府立北野高校などとの連携による講義・演習、そして府立高校2校における特別講義など、高校生を対象にした講義・実習を様々な手法で展開しています。
 例えば、公開実験授業は、高校生に大学での研究の魅力を体験してもらえるよう、教員はもちろん、チューターとしての育成指導を受けた学部生、院生が指導に当たり、3日間に渡る実習に取り組みます。実習は午前9時から午後6時頃まで、3〜4名を1班にしてみっちりと行われますから、まさに大学さながらの研究を体感することができます。実際、生徒たちは研究の楽しさだけでなく、難しさ、厳しさという大切な一面についても学んでいます。

山本 岡山大では、理学部がSSH指定校である岡山一宮高校と連携して取り組みを行っています。例えば、理数系科目に関心が高い3年生6名が毎週金曜日、高校の授業終了後、本学の5時限目の講義を約半年に渡り受講しています。
 この取り組みについて言えば、高校生がどこまで学べるのか、私たちにも分からない状態でのスタートでしたから、大学としても一つの実験でした。しかし、受講した高校生の感想は「一般の大学生と同じ講義を受けるのは大変だが、学問に対する視野が開かれた」「大学に進学する目標が見つかった」といったものが大半でした。岡山一宮高校の生徒には講義の度に疑問や質問をカードに書いてもらい、次の講義までに回答を書いて返すといった手厚いフォローを行った上での成果ですが、大学側として今後の高大連携に手応えを感じていることは事実です。

柳澤 愛媛大は理学部にSSH委員会を設置し、SSH指定校の松山南高校の理数科40名との連携を行っています。主な取り組みは、高校で事前授業を受けた上で大学教員の講義を受ける理数セミナー、大学や高校の教員の指導の下で研究に取り組む課題研究、そして高校2年生が週3回、研究室に出向いて研究に参加する大学研究室体験です。特にこの大学研究室体験が生徒に与えるインパクトは大きく、入学後の姿を具体的にイメージできるととても好評です。
 我々が松山南高校の生徒たちと接して驚いたことは、課題研究の発表会などで非常に積極的に質問することです。しかも、その質問が的を射ており、それに対する答えも非常に的確なのです。大学生でも難しいことを高校生ができている。これも同校の先生方が事前の学習にきちんと取り組ませ、更に自由に発言できる雰囲気をつくっておられる成果だと思います。
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