ベネッセ教育総合研究所
入試選抜の変化を探る 取材協力
荒井克弘
東北大高等教育
開発推進センター教授
荒井克弘
鈴木敏明
東北大高等教育
開発推進センター教授
鈴木敏明
石井光夫
東北大高等教育
開発推進センター教授
石井光夫
鈴木誠
北海道大高等教育
機能開発総合センター教授
鈴木誠
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編集部レポート
入試選抜の変化を探る
 SSHでは、実験・分析、探求型の学びを取り入れた教育実践が理数系分野でなされた。こうした試みは、大学入試・教育改革の流れとどのように結び付くのだろうか。その可能性を入試選抜の変化から考えてみたい。

changes 1 教科の試験問題の変化
課題解決力・論述力重視の出題が理科で広がる
 ここ数年、試験の形態を問わず、個別学力試験及び、大学入試センター試験の出題内容や出題形式から推察すると、要求学力にいくつかの変化が生まれてきている。まずは、その様子を整理したい。
 近年の入試問題の変化の特徴としては、「課題解決力を問う問題」「大学の教育との関連が深いテーマを扱った問題」の増加が指摘される。
 近年こうした傾向が顕著なのは、数理的な思考力や言語的な表現力を問う総合問題・小論文などにおける出題である。総合問題・小論文は既に国立大では全定員枠の25%以上で実施されるようになっている。図1のように、いわゆる知識の活用力・論述力を見るだけでなく、大学で学ぶ領域への資質や適性、興味・関心などを合わせて測定できるよう工夫されているものが多い。
図表
 また、教科別の試験問題を見ても同様の傾向が指摘される。ベネッセ教育総研が04年度に全大学の学長・学部長を対象に実施したアンケート(注)を見ても、07年度以降の個別学力試験の変更点として、「学習指導要領の範囲を越えた内容を含む問題を課したい」と答えたのは、理・工学系学部では10〜15%程度にとどまった。その一方、「教科・科目別に課題解決的思考力・論述力などを問うのが望ましい」とする考え方は理・工学系学部で60%を超え、「教科の知識・理解を測りたい」とする選択率(とても+そう思う)を上回る、トップの項目となっている。
※「高大接続に関する調査 2004年度版」全国立大学法人、全公立大学、全4年制私立大学の学長・学部長に実施。国立大からは計229名(回答率65.9%)から回答が得られた。
 個別学力試験のこうした変化は、大学入試センター試験でも同様と言える。近年のセンター試験は、知識の活用や考察力を必要とする問題や、分析・思考力を試すものが増加傾向にある。例えば、理科(生物IB)の問題では、知識だけで解決できる設問は徐々に減ってきている。05年度の理科各科目の問題を見ても、その傾向は更に強まったと言える。その代表的な例として挙げられるのが、生物IB第1問(図2)及び第5問、化学IB第5問、総合理科の全大問であろう。
図表
 06年度より新課程入試が始まる。学習指導要領における学習内容の削減は、入試の易化に単純に結び付くものではなく、むしろ、「覚えていれば解ける」知識・理解を中心とした入試からの要求学力の変化を加速させるものと予測される。図3は、大学入試において変化している要求学力が、高校で学ぶ教科とどう関連するかを考察してみたものである。教科を問わず、「広義の読解力」「論述力」の育成が求められるようになっている点がポイントであるが、理数教科・科目においては資料解釈力・思考力の育成や、大学進学後も学ぶ専門的な背景・初歩的な部分に触れさせておくといった取り組みが、必要になりそうだ。そうした視点に立ったとき、SSHの学校で試みられた、実験・観察・分析、レポート作成(英語含む)、発表(グループ討議やプレゼンテーション)といった学習活動の実践は、今後の入試が求める学力の育成と一致した流れのものとして考えられるだろう。
図3 入試の要求学力と各教科との関連図
図表
※VIEW21[高校版]12月号「大学入試改革の現状と展望」の論考より作成。


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