指導変革の軌跡 広島県立大門高校「課題解決力育成」
広島県立大門高校

広島県立 大門高校

「熱意・創意・誠意」を校是とし、自主的精神に満ちた人材の育成を目指す。科学研究で受賞歴多数の理科部、全国大会出場の弓道部、空手部など部活動も盛ん。「SPP事業」「18年度学力把握に関する研究指定校」等、文部科学省から指定を受ける。

設立●1975(昭和50)

形態●全日制/普通科(理数コース)/共学

生徒数(1学年)●約320名

06年度進路実績●国公立大には神戸大、岡山大、山口大、愛媛大、九州大、県立広島大など72名が合格。私立大には中央大、近畿大、関西大、立命館大、関西学院大、広島修道大など延べ411名が合格。

住所●広島県福山市幕山台3-1-1

TEL●084-947-7363

WEB PAGE●http://www.daimon-h.hiroshima-c.ed.jp/


岡田啓司

▲広島県立大門高校校長

岡田啓司

Okada Keishi

教職歴36年目。同校に赴任して2年目。「知と感と技の調和した生徒、文武に秀でた生徒を育成したい」

柳浦達宏

▲広島県立大門高校

柳浦達宏

Yagiura Tatsuhiro

教職歴23年目。同校に赴任して3年目。進路指導主事。「公徳心を土台にし、進路実現を図る生徒を育てたい」

山本大造

▲広島県立大門高校

山本大造

Yamamoto Daizo

教職歴23年目。同校に赴任して3年目。進路指導部副主任。理科主任。「やる気のある生徒はとことん応援したい」

小林恭久

▲広島県立大門高校

小林恭久

Kobayashi Yasuhisa

教職歴22年目。同校に赴任して5年目。1学年主任。「生徒に厳しく、私自身は妥協せずに指導を貫きたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡75


広島県立 大門高校「課題解決力育成」

全校体制で課題発見・解決型の学習方法を身につけさせる

● 実践のポイント
模試解説・模試ノートの活用で、課題発見・解決力を養う
単元ごとに目標達成度を測るテストを実施し、授業改善を行う
スタディーサポートを活用した面談で、学習方法の改善を図る

学区改編により上位層が流出

 広島県立大門高校が理数コースを設置したのは、2003年。学区改編により、学校間の競争が激しくなったからだ。進路指導主事の柳浦達宏先生は、当時を次のように述べる。
 「本校には長年、地区のトップ校として成績上位層が多数入学してきました。しかし、98年に本校の属する福山地区で総合選抜制度が廃止され、近隣の伝統校へ上・中位層の流出が始まりました。更に、03年に全県一円入試となることが決まり、競争激化は必至の状況でした」
 近隣の高校は国際コースや理数科を立ち上げ、学校の特色を打ち出し始めていた。手を打たなければ、生徒の流出は止まらない・・。そうした背景から、改革の端緒として打ち出したのが理数コースの設置だった。
 設置に際しては、二つの柱を掲げた。一つは国公立大進学実績を出す特進クラスとしての役割、もう一つは理数教科に興味を持つ生徒の力を伸ばしていくことだ。ただ単に、理数教育を充実するだけでは、学校としての独自色は出せない。そこで、最終的な進路は必ずしも理系にはこだわらず、文系にも対応できる学力を身につけられるよう、科目選択の幅に柔軟性を持たせることにした。岡田啓司校長はその意図をこう話す。
 「本校の進路指導の特徴は、生徒一人ひとりの適性や将来の目標を教師がしっかり把握し、希望の進路へと導いていくことです。最初は理数系に興味を持って入学しても、進路学習などを進めるうちに志望が文系に変わる生徒も少なくありません。生徒の可能性を幅広く見据えた進路指導の伝統を生かし、本校ならではの理数コースにしようと考えました」

理数コースの改革が従来の殻を破る原動力に

 コンセプトが決まると、具体的なカリキュラムの検討に入った。最大の目玉は、「総合的な学習の時間」を使った課題研究だ。理科部と合同で「液体や弦の弾性と音速」「慣性実験の研究」などのテーマで研究を行い、科学的な探究手法の習得、問題解決力の涵養を目指すのである。03、04年には文部科学省のサイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)に採択され、大学教員による特別講義も行うようになった。
 こうした活動が実り、理数コースを設置した03年には日本学生科学賞文部科学大臣賞を、04年には広島県科学賞特選、日本学生科学賞マイクロソフト奨励賞を受賞した。05年にはJSEC2005(高校生科学技術チャレンジ)の科学技術振興機構賞を受賞し、米インディアナポリスの国際学生科学フェアで研究発表を行う栄誉も得た。
 理数コースの実績により、難関国立大を目指す意欲の高い生徒が徐々に増え始め、06年度入試では理数コースの生徒の半数以上が九州大や岡山大などの国公立大に合格。普通コースも刺激を受けて学習意欲を高めるなど、学校に活気が戻ってきた。
 効果はそれだけではない。1学年主任の小林恭久先生は、「理数コースが規制緩和特区のような役割を果たした」と評価する。
 「新たな特色として理数コースを立ち上げる以上、これまでにない取り組みを積極的に行うことが重要と考えました。理数コースが、従来の殻を破る改革の原動力になったのです」
 今は全校で実施している家庭学習時間調査も、理数コースが始めた取り組みだ。以前は年2回だったが、理数コースでは入学時から生徒に毎週、調査表を提出させ、データをグラフ化して、すべての生徒・教師で共有することにした。また、朝読書や新聞記事についてコメントを書く活動も、理数コースが先鞭をつけた。
 まだまだできることはある――。理数コースが新しい改革の可能性を切り開く中、理数コース以外の教師たちも改革への自信を深めていった。


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