未来をつくる大学の研究室 情報通信工学

河野隆二

河野隆二 教授

こうの・りゅうじ
1956年生まれ。84年東京大大学院工学研究科博士課程修了。カナダ・トロント大学工学部客員研究員、横浜国立大助教授、ソニーコンピュータサイエンス研究所先端情報通信研究室長兼業等を経て、現在、横浜国立大大学院工学研究院教授、未来情報通信医療社会基盤センター長、独立行政法人情報通信研究機構新世代ワイヤレス研究センター医療支援ICTグループリーダー等を務める。 99年に「スペクトル拡散通信に関する先駆的研究」で電子情報通信会業績賞、03年に第1回ドコモモバイルサイエンス賞先端技術優秀賞を受賞。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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未来をつくる大学の研究室 06
最先端の研究を大学の先生が誌上講義!

横浜国立大大学院 工学府 物理情報工学専攻(工学部電子情報工学科)
情報通信工学

これまで日本は情報通信分野において欧米企業の後塵(じん)を拝してきた。
しかし今、無線通信の分野で、日本が世界の主導権を握りつつある。
高速無線通信「UWB(ウルトラワイドバンド)」の開発、国際標準化に成功した河野隆二教授が、情報通信工学の展望を語る。

情報通信工学って?

ネットワークでつながる未来を生み出す

新しいテクノロジーは、社会に大きな変革をもたらす。家電製品、オフィス機器、医療機器など、あらゆるものがネットワークでつながることで実現される「ユビキタス社会」が、間もなく到来すると言われている。 例えば、携帯電話を使って、外から自宅のあらゆる家電製品を遠隔操作することも可能になる。こうした社会のネットワーク技術を担うのが、「情報通信工学」の分野だ。未来を生み出す研究に、今、注目が集まっている。


教授が語る

ユビキタス社会を実現する情報通信技術の最先端

河野隆二 教授

情報通信工学との出合い
携帯電話が普及する前からCDMAを研究

 「情報通信工学」という学問が日本に登場したのは30年以上前、私が高校生のときです。 私は新しい学問に胸を躍らせ、大学で情報通信を専攻しました。 しかし卒業時、日本のIT業界は成功しているとはいえませんでした。 その中で、一番魅力的だったのが、当時はマイナーだった無線通信の分野です。 今でこそ携帯電話は当たり前のように使われていますが、当時の主流は有線通信。 でも、人と違うことをするのが好きな私は、未踏の領域に飛び込んだのです。
 大学院生の私は、NTTドコモにインターンシップとして通い、近い将来、携帯電話の普及を確信していました。 当時の第1・第2世代の携帯電話は、狭帯域通信方式でした。 しかし、私は正反対の広帯域通信方式であるCDMA(※1)のスペクトル拡散通信方式がより有望と確信して、教員になっても、研究してきました。
 私の確信は、2000年から世界で最初に広域帯CDMAの第3世代携帯電話が爆 発的に普及したことで証明されました。現在、日本の携帯電話の主流はこのCDMA ですが、NTTドコモにこの方式の採用を働きかけたのは私たちです。この功績が認 められ、NTTドコモ主催の第1回ドコモモバイルサイエンス賞先端技術優秀賞を受 賞しました。

用語解説
※1 CDMA(Code Division Multiple Access)  符号分割多重接続の略。第3世代携帯電話の通信方式で、広帯域方式の符号でユーザーを区別する。高速移動時144kbps、静止時2Mbpsのデータ伝送能力があり、動画、音声のリアルタイム通信が可能。
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