中学校の現場から 生徒の人間関係
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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中学校の現場から

生徒の履歴をつかみ、今の指導につなげる

生徒の人間関係
人との関係を構築し、社会性を身につける手法とは

 最近の生徒は、他人との関係性を築いていく力が弱い、関係を築く相手の年齢などの幅が狭い……。こうした生徒の人間関係の課題を指摘する声は、中学校の現場でもよく聞かれる。最近は、そうした課題がいじめや不登校などに発展することもあり、社会的な問題として大きな注目を集めている。家庭や地域などで自分と異なる年齢・価値観の人と関係を築いていく体験の乏しさが、昨今の諸問題の一因となっていると指摘する声もある。
 そこで今号は、中学生の人間関係づくりにおける課題を整理すると共に、子どもたちの人間関係の構築力を高めるための中学校の取り組み事例をリポートする。

「悩みを相談できる友だち」のいない生徒たち

 まず、中学生は人間関係についてどのような意識を持っているのか。ベネッセ教育研究開発センターの調査データから確認したい。
 図1は、「悩みごとを相談できる友だちの数」を聞いたものだが、「いない」と答えた生徒は14・1%に上る。中学生の7人に1人が親密な関係の友だちがいないということになる。
 また、図2は、「友だちとの関係」を聞いたデータだが、「グループの仲間同士で固まっていたい」「仲間はずれにされないように話をあわせる」「友だちと話が合わないと不安に感じる」と答えた生徒が4〜5割程度いることがわかる。

図1,2
図1、2出典第1回子ども生活実態基本調査(2004年/ベネッセ教育研究開発センター)

 以上のことから、中学生の多くが、人間関係に何らかの悩みや不安を感じていることがわかる。その一因として、一人っ子が多く、きょうだいとのやりとりが少ないことや、地域社会の人間関係が希薄になったことで、異年齢の子どもとの付き合いが減少したり、保護者以外の大人と話す機会が少なくなったりしたことを挙げる声もある。つまり、今の子どもは、年上や年下の相手との衝突や譲歩、妥協、和解といったことを含む豊かなコミュニケーションを通して社会性を養う体験が少なくなってきたとする意見だ。
 そもそも、多くの子どもたちは中学校に入ると、学習量の多さ、授業進度の速さに戸惑いがちだ。それに加え、複数の小学校から生徒が集まるため、子どもたちは進学に伴って人間関係を新たにつくり直すことが求められる。学習面、そして生活面での急激な変化がストレスとなり、いじめ、不登校といった形になって表れることもある。
 小学校では、クラス担任制が基本であり、クラス担任とクラスの子ども集団との関係は密接だ。しかし、教科担任制が採られている中学校では、授業ごとに先生が替わることになる。そのため、クラス担任をはじめとする教師と子どもとの関係は小学校のときと比べると相対的に希薄になってしまう。そうした教師と子どもとの関係の変化も、子ども同士の人間関係や社会性などに影響を及ぼしているのかもしれない。


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