特集 生徒を大人にする「生徒指導」

富山県立富山中部高校

◎「学力の充実 品性の陶冶 心身の鍛練」を教育目標として、民主的で自主性・創造性に満ちた人間の育成を目指す。部活動も盛んで全校生徒の加入率は93%。陸上部や文芸部、囲碁将棋部など全国大会コンクール出場実績を持つ部も多い。

設立●高校:1920(大正9)年

形態●全日制/普通科・理数科/共学

生徒数(1学年)●280名

07年度進路実績●国公立大には、北海道大17名、東北大18名、東京大14名、名古屋大6名、京都大3名、大阪大8名など224名が合格。私立大には、慶應義塾大、上智大、早稲田大、同志社大、立命館大、関西学院大など延べ473名が合格。

住所●富山市芝園町3-1-26

TEL●076-441-3541

WEB PAGE●http://www.chubu-h.tym.ed.jp/


荒井克博

▲富山県立富山中部高校校長

荒井克博

Arai Katsuhiro

教職歴35年目。同校に赴任して2年目。「たくましく生きる力、人間としての豊かさを持った生徒を育てたい」

新夕義典

▲富山県立富山中部高校教頭

新夕義典

Nitta Yoshinori

教職歴29年目。同校に赴任して14年目。「好きな言葉は『一隅を照らせ』。その精神を生徒に伝えていきたい」

五艘孝芳

▲富山県立富山中部高校

五艘孝芳

Goso Takayoshi

教職歴28年目。同校に赴任して4年目。生徒指導部長。「人の気持ちがわかる生徒を育てたい」

堀由紀男

▲富山県立富山中部高校

堀 由紀男

Hori Yukio

教職歴27年目。同校に赴任して14年目。進路指導部長。「モットーは至誠。だれに対しても誠実であってほしい」

柳原英志

▲富山県立富山中部高校

柳原英志

Yanagihara Hideshi

教職歴25年目。同校に赴任して8年目。2学年主任。「生徒と共に成長していける教師でありたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【学校事例1】

富山県立富山中部高校

学校行事を通して生徒同士が学び合う仕掛けをつくる

富山中部高校では、生徒同士の学び合いの中から、学校への帰属意識、学校生活に対する前向きな姿勢を身につけさせている。教師の一方的な指導ではなく、生徒自らの主体的な変革を促す同校の生徒指導の在り方を探る。

「自治」の伝統の下生徒の学び合いを重視

 富山中部高校は、例年、200名以上の国公立大合格者が輩出する県内屈指の進学校だ。「鍛錬・自治・信愛」を校訓に掲げ、生徒の自主性・主体性を重んじてきた。
 「本校が創立した当時は、第一次世界大戦後の自由・民主の風潮が色濃く残る時代。また、本県には全国を揺るがした米騒動の発火点ともなったデモクラシーの気風溢れる風土があります。本校が『自治』を校訓の一つに掲げたのも、そうした時代的・風土的背景と無縁ではないでしょう。生徒の自主性・主体性を重んじる本校の校風は、学校行事や進路・学習指導などあらゆる場面に脈々と受け継がれています」と、荒井克博校長は同校の成り立ちを説明する。
 生徒の自主性・主体性を重んじる指導は、同校の生徒指導にも色濃く表れている。教師の一方的な指導や教え込みは極力避け、生徒同士がかかわり合う中で、学び合い、成長し合う仕掛けづくりを意識している
 その端緒となるのが、4月の入学直後に行われる新入生合宿だ(図1)。予習・復習の仕方や授業の受け方など、学習習慣を身につけさせることが主な目的だが、生徒同士が刺激し合うことで、一人ひとりの成長を促すことも狙っている。例えば、2日目の「本校の目指すもの」という講話では、同校の教育方針を伝えるだけではなく、教師はできるだけ生徒の発言も引き出すようにしている。新夕義典教頭は次のように話す。
 「どのような思いで本校に入学したのか、将来の夢は何か。最初は黙っている生徒がほとんどですが、発言を促すうちに、生徒の方から語り始めるようになります。ほかの生徒の考え方や生き方に触れることで刺激を受けると同時に、高校生活をどのように過ごしていくべきかということを真剣に考えるきっかけになります。顔つきが変わりますね」

図1

  07年度には、9月にも合宿を行った。その狙いについて、「1学期の終わりころになると、高校生活で最初にぶつかる壁をなかなか乗り越えられず、悩みを持つ生徒が出てきます。特に夏休み明けにいろいろな問題が出てきますね。『自己変革』ができずに困っている生徒を支援したい、という思いから始めた取り組みです」と新夕先生は語る。生徒同士、先輩と後輩が、悩みを相談し合うピアカウンセリングの手法を使った学習合宿で、クラスメイト同士でうまくいった経験を教え合ったり、先輩が困難を乗り越えた経験を話したりして、生徒に自己変革を促す。
 「卒業生の大学1年生にも一役買ってもらいます。高校時代の学習面、生活面の悩み、それを乗り越えた先輩の話から、解決の糸口を見いだす生徒は少なくありません」(新夕先生)


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