指導変革の軌跡 福島県立磐城高校
福島県立磐城高校

福島県立磐城高校

◎2008年に創立112年となる伝統校。「知性と責任」を校是として、高い理想を掲げて自己実現を図れる人材の育成を目指す。「学力の向上」「進路意識の高揚」「教員の指導力向上」を進路目標に掲げ、「ハイレベル講座」や「最先端研究講義」などを展開。部活動では、水泳部や陸上部が国体の常連。

設立●1896(明治29)年

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約320名

07年度進路実績●国公立大には、東北大、筑波大、千葉大、東京大、東京工業大、一橋大、名古屋大、京都大、大阪大、福島県立医大など168名が合格。私立大には、青山学院大、慶應義塾大、中央大、法政大、立教大、早稲田大、同志社大、立命館大など、延べ529名が合格。

住所●〒970-8026 福島県いわき市平字高月7

TEL●0246-23-2566

WEB PAGE●http://www.iwaki-h.
fks.ed.jp/


半谷佳之

▲福島県立磐城高校

半谷佳之

Hangai Yoshiyuki
教職歴17年目。同校に赴任して8年目。進路指導主事。「勇気を持ってオリジナリティを追求する生徒を育てたい」

渡辺学

▲福島県立磐城高校

渡辺学

Watanabe Manabu
教職歴20年目。同校に赴任して7年目。1学年主任。「生徒には、照らされて光るダイヤよりも、自ら光る蛍のような存在になってほしい」

小川将広

▲福島県立磐城高校

小川将広

Ogawa Masahiro
教職歴16年目。同校に赴任して9年目。2学年副主任。「地域や日本、世界で活躍できる人材を育てたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡101


福島県立磐城高校「入試問題研究冊子の作成」

難関大入試分析に取り組む努力が教師の自信につながった

● 実践のポイント
学年を問わず、5教科の教師全員で入試問題の解答・解説冊子『大学入試問題研究』を作成する
自校の生徒の実情に応じた解答・解説を書くことで市販の過去問題集との差異化を図る
1〜3年生に配付する進路の手引きに入試問題の一部を掲載し、『大学入試問題研究』の活用を促す

若手教師の増加により指導力不足が課題に

 福島県立磐城高校では、教師の教科指導力向上のために毎年夏に『大学入試問題研究』という大学個々の入試問題のオリジナル解答・解説書をつくっている。この取り組みは10年前に始められたが、以前はページ数が少なく、作成にかかわる教師は各教科で数名に過ぎなかった。それを3年前から掲載する大学数と問題を大幅に増やし、国数英理地歴の5教科の教師全員が解答・解説を執筆するようにした。今ではA4版400ページに及ぶ大作となっている。
 大幅にページを増やした背景には、「せっかくつくるのであれば、すべての教師の指導力向上に結び付くものにしたい」という狙いがあった。進路指導主事の半谷(はんがい)佳之先生は、「福島県の公立高校では、大規模校に新採用の教師が配置される傾向が見られます。本校にも20〜30代の若手教師が毎年2、3名赴任していて、例えば2007年度1学年担当の教師の平均年齢は、30代半ばでした。そのため、指導においてフットワークがよい半面、指導経験を積む機会が少なかったという面も見られました」と、課題を指摘する。
 地域の期待に応えたいという思いも強い。同校では、男子校時代には毎年100名前後の現役国公立大合格者が輩出。共学1期生の04年度入試からは、例年140名前後の高い水準で推移している。ただ、東京大・京都大といった超難関大を目指す生徒はまだ少なく、成績上位層の生徒により高い志望を実現させることも課題となっている。1学年主任の渡辺学先生は次のように話す。
 「近年、大学入試問題は易しくなっているといわれますが、難関大の入試では依然として高い学力が求められています。生徒に東京大や京都大などに合格できる力をつけさせるには、教師自身がこれらの大学の入試に対応できる教科指導力を身につけることが必要です。本校に赴任したらできるだけ早くそれだけの指導力をつけてもらうことも、『大学入試問題研究』の狙いです」

『大学入試問題研究』で半数の生徒の志望大をカバー

 『大学入試問題研究』は次のような流れで作成する。夏休み前に教科内で掲載する問題を選び、担当者を割り振る。例えば、英語科では10名の教師を2名ずつのチームに分け、各チーム1、2大学を担当、数学科や国語科では大学ごとに担当を決めている。そして、8月中に原稿を作成し、夏休み明けに教科主任に提出後、2週間かけて印刷・製本を行い、9月末に発行する。冊子は、全教師に1冊ずつと、1〜3年の全クラスに2冊ずつを配付する。
 掲載大学は、東京大・京都大・東京工業大・一橋大といった難関大、東北大・筑波大・千葉大といった同校で志望者の多い大学、更に5、6月に行う志望大調査の結果に応じて加える医大や有名私立大の数校である。同校の生徒の志望大は、東北大と筑波大で100名前後、千葉大30〜40名であり、この3大学で全体の3分の1を占める。同冊子に掲載される大学で半数の生徒の志望大をカバーできるというわけだ。
 掲載大学以外にも、教師が独自に研究しているテーマの解答・解説も掲載する。07年度版では、巻末に「歴史は現代文問題でどう扱われているか――大学入試問題は時代を反映する」というテーマの解説を付記した。複数大学の入試から歴史をテーマとした問題を選んで、全体の傾向や大学側の狙いを解説。単に入試問題を解説するだけでなく、入試を切り口として生徒に社会について考えさせようとしている。


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