特集 「自立する高校生」をどう育てるのか
野村直正

▲群馬県立前橋高校校長

野村直正

Nomura Naomasa

教職歴35年。同校に赴任して3年目。「自ら考え、工夫し、課題を克服していく生徒を育てたい」

水村達英

▲群馬県立前橋高校教頭

水村達英

Mizumura Tatsuhide

教職歴28年。同校に赴任して2年目。「校訓にある『質実剛健』『気宇雄大』な生徒を育てたい」

長岡正範

▲群馬県立前橋高校

長岡正範

Nagaoka Masanori

教職歴33年。同校に赴任して8年目。進路指導主事。「夢を持ち、その実現に向け努力できる生徒を育てたい」

丸山正

▲群馬県立前橋高校

丸山正

Maruyama Tadashi

教職歴25年。同校に赴任して7年目。1学年主任。「人間力が高く、優しくて強い生徒を育てたい」

清水豊

▲群馬県立前橋高校

清水豊

Shimizu Yutaka

教職歴22年。同校に赴任して6年目。2学年担任。「問題意識を持って、自分から学習する生徒にしたい」

高橋康幸

▲群馬県立前橋高校

高橋康幸

Takahashi Yasuyuki

教職歴25年。同校に赴任して12年目。3学年主任。「元気な生徒を育てたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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生徒の変化と進路実績の向上で、成果を実感

 1992年に「カット」が廃止されたのは、そうした動きの先駆けだった。しかし、生徒の家庭学習に教師が踏み込むのは、かえって自立を妨げるとする意見も根強くあった。この十数年は、生徒の自主性を重んじる教師と、組織的な取り組みを重視する教師が合意を築き上げていく過程であったといえる。
 同校は、学年主導で取り組みを進めるところから始めた。学年単位で新しい取り組みを試行し、うまくいけば次の学年に引き継いでいく。ある取り組みは消え、別の取り組みは学校全体で共有される、そうした淘汰が繰り返された。学習合宿や入学者オリエンテーション、受験前の添削指導など、現在行われている取り組みの多くは、そうしたプロセスを経て徐々に定着していった。
 進路指導主事の長岡正範先生は、「生徒の変化、進路実績の向上など、成果を目の当たりにすることで、手をかける必要性を、教師が実感するようになりました」と振り返る。現在、現役の大学合格率が9割を超えているのは、そうした積み重ねの結果だろう。

予習で得た自信が主体的な学びを促す

 手をかける指導といっても、教師がすべて手取り足取り指導するわけではない。「学習は生徒の主体的な営みである以上、すべてを教師が仕切るわけにはいきませんし、すべきでもないと考えます。主体的に学ぶ状況を整えることこそが私たち教師の仕事です」と野村校長は強調する。
 「主体的に学ぶ力を身に付けさせるために、教師が手をかける」。これが基本的なスタンスだ。1年生4月の学習オリエンテーションでは、予習の仕方、辞書の引き方を教え、予習をして授業を受けるという流れを体験させる。最初の中間テストでは、生徒が確実に学校に適応できているかどうか、結果を見ながら担任と教科担当とが話し合い、問題があれば生徒と面談をして解決していく。
 入学時から手厚く指導する一方、授業は予習を前提として進む。「予習をすれば授業がわかる」。その自信が、生徒に授業に対する前向きな意識を持たせ、自立的な学習態度を培うと考えるからだ。例えば、早ければ1年生から、予習で理解した内容と授業が異なっていたときには「僕の予習の仕方は間違っていますか」「違う解法を考えたのですが」と、自ら教師に疑問を投げかける生徒がいる。
 自学自習も、生徒の自信を育む好機と捉えている。特に夏休みに行う学習合宿では、1、2年生は5日間、3年生は6日間、それぞれ1日10時間30分、自習させる。教師からの指示は一切ない。生徒自身が課題を選び、わからないことは待機している教師に質問する。
 「自学によって身に付けた学力もさることながら、それ以上に重要なのは、自ら選んだ課題に10時間以上も取り組んだという自信です。それが受験に耐えられる強い心を育み、まわりの生徒と切磋琢磨する雰囲気を生み出すのです」と、長岡先生は指摘する。
図1

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