特集 新課程のポイントと高校教育への影響
工藤文三

▲国立教育政策研究所 初等中等教育研究部長

工藤文三

Kudo Bunzo

公立高校教諭を務めたあと、国立教育研究所(現・国立教育政策研究所)の研究官に就任。教科教育開発研究室長等を経て、05年度から現職。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 2/13 前ページ  次ページ

【インタビュー】

新課程を
「学校の目標づくり」に生かしていく

国立教育政策研究所初等中等教育研究部長 工藤文三

2008年12月、文部科学省より高校の新課程の告示案が発表された。
この改訂により、高校教育はどのように変わるのか。
また、これを契機に取り組むべきことは何なのか。
国立教育政策研究所初等中等教育研究部の工藤文三部長に話を聞いた。

新課程を貫く 三つの視点

 今回、告示案が発表された高校の新課程は、現行課程のように完全学校週五日制の実施や「総合的な学習の時間」の導入といった大きな変更がないこともあり、変化に乏しいと受け止められているようです。ただ、学校現場の実態や近年の教育課題を反映した、完成度の高いものになっています。
 改訂の方向性は、おおよそ次の三つに分けられます。
 一つめは、「教育基本法」と「学校教育法」の二つの上位法令の改正に伴う改訂です。教育基本法で謳(うた)われた伝統や文化の尊重、公共の精神の涵(かん)養は、各教科の内容や道徳教育の充実などに反映されています。また、学校教育法30条2項に合わせて、総則では「基礎的・基本的な知識・技能を活用して課題を解決するための思考力・判断力・表現力等の育成」が掲げられました。多くの教科で「活用の重視」が掲げられ、理科に「探究活動」が導入されたのは、そのためです。
 二つめは、現場の工夫を生かそうとしている点です。「週当たりの授業時数が30単位時間を超えてもよい」とする規定は、学校現場の実態を踏まえ、各学校の裁量を認めるものです。「10分間程度の教科の学習などを年間授業時数に算入できる」という規定も、中学校では既に行われていることの意義を確認したものといえます。
 三つめは、ここ数年に渡って議論されてきた教育課題の克服を目指した改訂という点です。「言語活動の充実」が各教科で掲げられているのは、PISA(OECDによる国際的な学習到達度調査)の結果によって、読解力に課題があることが明らかになったことを受けての措置でしょう。「主体的な学習態度」「学習習慣の定着」「家庭との連携」などが強調されているのも、各種の調査から浮き彫りになった課題を受け止めているからです。
 新課程は、縦横によく練られた内容になっており、趣旨を正しく理解し、実践することによって、高い教育効果を期待できるものになっています。

  PAGE 2/13 前ページ 次ページ
目次へもどる
高等学校向けトップへ