特集 「大学入試分析」を生かす
柴田博

しばた・ひろし

松江北高校では進路指導部長などを務め、同校の進路指導の中心的役割を担う。在任中、同校は全国の公立高校で最多となる国公立大合格者を送り出す。2008年度まで益田高校校長を務める。

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【インタビュー】

「高校生のため」の大学入試分析が、
生徒の進路実現を保証する

前・島根県立益田高校校長 柴田博

「高校生のため」の大学入試分析が、生徒の進路実現を保証する
生徒の志望進路、そして大学入試制度が多様化する中で、入試をどのように分析し、指導に生かすべきか。
進路指導に長年携わってきた柴田博先生に「真に生徒のための入試分析」とは何かをうかがった。

入試問題は高・大を結び、その分析は指導の礎に

 「大学入試に対応する学力は、日々の授業で獲得する学力とは異なり、入試問題を解くためには教科書では扱わない特別な知識やスキルが必要である」という声をかつて高校の教育現場でも聞くことがありました。しかし、入試問題は大学教育と高校教育を結ぶ太いパイプなのですから、その種の思いこみは大切なことを見失わせることにもなりかねません。
 改めて各大学の入試問題を分析すると、大学が発信し、高校の教育現場がしっかりと受信すべきことがいくつか明らかになります。
 例えば、大学が高校生にどのような学力を求めているか、言い換えると、高校で定着させるべき知識の質・量や、その活用にどのような能力がどの程度まで求められているかが分かります。東京大や京都大をはじめとする国公立大の入試問題を分析すると、出題者の先生方が高校の教科書をよく研究していることがうかがえます。「どんな先進的な理論や研究も、高校の教室で獲得する確かな基礎学力の延長線上にある」と私は考えていますが、同じ発想に基づいて入試問題は作られていると感じています。そのことに気付けば、私たちの授業は教科書の内容の理解と定着をまず主眼に置くべきだ、と自信を持って確認できるはずです。
 また、入試問題分析の結果が共通理解され、具体的な到達目標や到達レベルが設定できれば、指導担当者が連携しチームとなって機能することが容易になります。定期考査や課題テスト、あるいは校内実力テストなどの作問ノウハウも、入試問題の分析の深さと比例して進化していくはずです。
 更に、入試問題は、90分から120分という長時間にわたり集中力を切らさず「脳細胞に汗をかくことができる生徒」と、自己努力の評価指数とも言える得点次第で合否が決まるという「厳しい現実認識を持つ生徒」を育まなければならないことを、私たちに教えてくれます。
 このように、入試問題の分析を通して、私たちは日々の指導の在り方と育てるべき生徒像を確認し、それに基づいて3年間という限られた時間で、どのような教育活動をどのように展開すべきかという指導計画を構築していきます。

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