特集 「自立心」を育てる進路学習
久保島昌一

埼玉県立不動岡高校
教頭

久保島昌一

教職歴31年。同校に赴任して1年目。1992年から2001年まで不動岡高校教諭。99年から教務主任として新課程(現行)の準備に着手。01年度の1年間、総合学習「F―プラン」の実施計画の策定に尽力した。09年度、同校教頭として再赴任。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【インタビュー】埼玉県立不動岡高校:久保島昌一教頭、福岡県立城南高校:和田美千代教頭

生徒の自立を促す
これからの進路学習を考える

生徒が志を持って人生を切り開く力を育成するため、多くの学校が「総合的な学習の時間」(以下、総合学習)などで進路学習を展開してきた。
主体的に学習に向かう姿勢の育成を推進してきた埼玉県立不動岡高校の久保島昌一教頭、「ドリカムプラン」の立ち上げにかかわった福岡県立城南高校の和田美千代教頭に、進路学習の課題と展望をうかがった。

「今の自分」と「なりたい自分」との間での葛藤が
生徒の自立を促す

埼玉県立不動岡高校教頭 久保島昌一

今までの進路学習

教師の働き掛け次第で 生徒の主体性は伸びる

 ここ数年、生徒が受け身になったと実感しています。与えられた課題はきちんとこなすものの、強制されないと、途端に提出率が低くなる。ノートはきちんと取るが、それだけで勉強したような気になってしまう。
 2002年度に不動岡高校で総合学習「F―プラン」を導入した時、既に同じ課題に直面していました。主体的に学習に向かう姿勢、確かな学力と豊かな表現力を身に付けるという目標の下、教師一丸となって取り組みを進めてきました。
 しかし、生徒を自立に導くには、学校や生徒を取り巻く状況が、当時以上に厳しくなっていることを感じます。04年度から埼玉県の高校の学区が撤廃されたことで、我々教師は大学合格実績をより意識せざるを得なくなりました。更に08年度、本校は単位制に移行し、生徒の意識は科目選択に向いてしまい、ゆっくりと自分自身や将来を見つめ直す時間もますます少なくなってしまいました。
 ただ、教師の働き掛けや課題の与え方次第で、生徒はきちんとアウトプットできる潜在能力を持っていることも実感しています。しかし実際は、授業でインプットしたことを生徒がどのように消化し、アウトプットまでつなげるかに、教師の目が向けにくくなっているように感じます。生徒の主体性を育むためには、何よりもアウトプットの強化が大切であり、そのために進路学習があると思っています。
不動岡高校「F―プラン」とは

◎02年度に1〜3学年で導入され、以来7年間継続している総合学習の取り組み。1年次「自分を知り、社会を知る」、2年次「体験的に知を深める」、3年次「知を総合化し、表現する」がテーマ。進路講話や学部・学科研究、入試研究、小論文、個人研究等を通して「選択力」「社会力」「表現力」を身に付け、「明日の世界を創造する品格あるリーダーの育成」を目指す。

短期目標に目を奪われず 取り組みの理念を振り返ろう

 本校の生徒は3分の2が国公立大志望ですが、最近は途中で息切れして志望校を変更する生徒も増えています。力がありながら妥協してしまう。それは長期的目標を持てないからであり、だから生徒は短期目標にばかり目を奪われているのでしょう。本校の「F―プラン」の課題の1つもそこにあります。3年間を見通したプログラムでありながら、次の学年への連続性、発展性の視点があいまいになっている気がします。もっと3年間というスパンを意識すべきではないかと思います。いま一度、それぞれの短期目標がなぜあるのかを根本から問い直し、取り組みの本当の狙いを確認する必要があります。
 そもそも、「国公立大○人合格」といった目標を掲げたのはなぜか。大学に入れること自体が我々の目標ではなかったはずです。新学習指導要領の施行を間近に控えた今こそ、総合学習を立ち上げた当初の理念や目標に立ち返るべきだと思います。

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