30代教師の情熱
ほそぎ・やすひろ

ほそぎ・やすひろ

教職歴14年。公立高校に1年間勤務後、同校に赴任。2002年度から「智翠館コース(現・智翠館特別コース)」を担当。教科は国語。現在は智翠館特別コースの2年生担任、進路指導主任。


島根県・私立石見智翠館高校

◎1907(明治40)年設立。全日制の普通科高校。難関大進学を目指す「智翠館コース」を01年度に設け、東京大、京都大など合格実績を着実に上げる。野球部、ラグビー部は全国大会出場の常連。
◎教員数…34人(うち智翠館特別コース6人) ◎1学年生徒数…約100人(うち智翠館特別コース約15人) ◎2009年度入試の合格実績…国公立大は東京大、広島大、鳥取大など10人合格、私立大は、明治大、早稲田大、立命館大、関西大などに延べ71人合格。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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30代教師の情熱 学校を活性化させる『30代』は、何に悩み、何を課題と感じているのか

「大学に入ったがしたいことが分からない」
そんな生徒をなくしたい

島根県・私立石見智翠館(いわみちすいかん)高校教諭 細木康弘

「実績を出さなければならないというプレッシャーから、生徒の気持ちを考えずに
指導していた」と振り返る細木康弘先生。今は、生徒が自ら将来を考え、伝えられるように
なることを目標とし、そのために自分自身の視野を広げていくことが課題と話す。

かつての私
「『質』より『量』―実績を出したい」と生徒無視の指導に走る

 担任をする智翠館特別コースは、1学年1クラス、十数人のみです。3年間持ち上がりなので、生徒と話す時間はたっぷりあります。入学するとまず好きなことを50個書かせます。これを話題のきっかけとして、将来を考えさせるように働き掛けていきます。
 ただ、いくら話し掛けても、なかなか自分の考えを話せない生徒もいます。そういう生徒には、頻繁に声を掛け、時機が来るまで待ちます。「自分はこれをしたい」と自ら発見した時に、生徒はとても強くなり、それが自立のきっかけになるからです。
 今でこそ生徒のことを考えた指導が少しできるようになりましたが、以前は全く違う気持ちで生徒と接していました。
 本コースの前身である「智翠館コース」は超難関大進学を目指し、2001年度につくられました。私は02年度に1期生の2年生から担任を受け持ちましたが、まとまった進路指導経験がない中で、「とにかく実績を出さなければ」と必死でした。それまでは進学コースで国語を担当し、野球部のコーチでした。野球部は夏の甲子園大会に7回出場したほどの強豪で、部活動中心の生活となっていました。この時の指導経験は、智翠館コースでの指導にも大いに役立ちました。ただ、本校自体に難関大への進学実績が少なく、学年団がない環境で一緒に考える仲間もいません。熱意はあっても、進路指導のノウハウが得られない。自分1人であがく日々が続きました。
 「指導法に自信がないなら、とにかく『量』で対抗するしかない」と、私はスパルタ指導に走りました。「難関大の合格方法」が書かれた書籍を読みあさり、自分の受験時代を思い出しながら指導計画を立てました。他校の先生から「年末年始の休みは大みそかと元旦だけ」と聞けば、私も休みなく生徒を学校に来させて補習をしました。模試は全教科を徹底的に分析し、他校に比べて得点が低かった分野を見つけて、担当教科の先生に話して、その分野の指導を強化してもらいました。
 志望校を決めるにしても、少しでも難易度の高い、名の通った大学に入ることが、生徒にとって幸せだと思っていました。「この大学に入れる学力があるのに、なぜ受けないのか」と、生徒の志望も考えずに模試の結果だけで志望校を勧めていました。今、振り返ると、生徒に申し訳ないと思うばかりです。

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