第2回子ども生活実態基本調査報告書
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第3章
学習について

第1節 学習の実態

1. 家での学習時間

 全体的な傾向としては、学校段階が上がるにつれて「ほとんどしない」層と「2時間+2時間30分」「3時間+3時間以上」の層が増加し、家庭学習時間の二極化が進む。また2004年との経年比較では平日・休日ともに、小学生で家庭学習の時間が増加し、中学生で減少している。高校生に大きな変化はない。また成績・高校偏差値層別では、高校生で変化がみられ、進学校の生徒で学習時間が減少し、中堅校や進路多様校で学習時間が増加している。

家庭学習の時間は学校段階が上がるにつれて二極化

 子どもたちはどれくらい家庭で学習しているのだろうか。学習塾や予備校を除いた家庭での学習時間を示したものが図3-1-1である。「ほとんどしない」の比率をみたところ、小学生では5.4%であるのに対し、中学生では20.5%、高校生では25.1%と学校段階が上がるにつれて大幅に増加している。一方で、平日に「2時間+2時間30分」家庭学習をしていると回答した比率も小学生で8.1%だが、中学生で11.3%、高校生で19.1%と増加している。
 家庭学習の時間は、学校段階が上がるにつれて二極化が進む傾向にあるようである。また休日の家庭学習時間についても確認したが、「2時間+2時間30分」「3時間+3時間以上」の層で比率が若干高くなってはいるものの、ほぼ平日と同様の傾向が確認された。
■図3-1-1 家での学習時間(学校段階別)
図3-1-1 家での学習時間(学校段階別)
 また、家庭学習時間(平均値)を経年比較でみたものが表3-1-1である。平日・休日ともに小学生で学習時間が増加し、中学生で減少している。高校生にほとんど変化はない。
 次に、家庭学習の時間を成績・高校偏差値層別にみたものが図3-1-2である。小学生の学習時間は、すべての成績層において増加がみられた。「確かな学力」の向上を目的に、小学校の先生が宿題の提出や家庭学習の定着に地道に取り組んできたことが、結果にあらわれているのかもしれない。また学校外環境の変化として、少子化から、有名大学が学生確保を目的に小・中学校の経営に乗り出したことで、中学受験への注目が高まってきたことも影響しているかもしれない。
 逆に中学生は、すべての成績段階において学習時間の低下がみられた。調査時期の変化の影響を考慮する必要はあるが、それらをふまえても成績中位層の学習時間の低下幅が大きくなっている点は目につく。
 また高校生については、高校偏差値層ごとに学習時間をみた。進学校で学習時間の低下がみられる一方、中堅校や進路多様校では学習時間が増加しており、進学校の成績中位層・下位層と、中堅校の成績上位層・中位層では逆転現象が起こっている。
■表3-1-1 家庭学習の平均時間(学校段階別、経年比較)
表3-1-1 家庭学習の平均時間(学校段階別、経年比較)
■図3-1-2 平日の家庭学習時間(学校段階別・成績/高校偏差値層別、経年比較)
図3-1-2 平日の家庭学習時間(学校段階別・成績/高校偏差値層別、経年比較)

注) 平均時間は「ほとんどしない」を0分、「3時間以上」を210分のように置き換えて、無回答・不明を除いて算出した。          

          

 この現象について、数人の高校教師にヒアリングを行ったところ、進学校の生徒で家庭学習時間が低下していること、また中堅校や成績上位層で家庭学習時間が増加している傾向はあるが、結果はそれほど喜べるものではないといった声が大半であった。
 現場の教師にとって、今回、中堅校や進路多様校で生徒の家庭学習時間が増加したのは「あくまで教師側が積極的に宿題や課題を与えて勉強に向かわせたからにすぎず、生徒自身が自主的に勉強に取り組んだ結果かどうかはわからない」といった認識が強いようである。そして「進学校の生徒でも教師側が環境を設定しなければ勉強しなくなってきているのかもしれない」と危惧する声が聞かれた。
 この平日の家庭学習時間の傾向は休日でも同様に確認された(図3-1-3)。単に家庭学習の時間を増加させるだけでなく、いかに主体的に子どもに学習に取り組ませるかが教師にとっての大きな課題のようである。

■図3-1-3 休日の家庭学習時間(学校段階別・成績/高校偏差値層別、経年比較)
図3-1-3 休日の家庭学習時間(学校段階別・成績/高校偏差値層別、経年比較)
 最後に家庭学習の時間を性別でみる(表3-1-2)。  全体的な傾向としてはすべての学校段階で、「ほとんどしない」の比率が男子に比べて女子で低く、「2時間+2時間30分」「3時間+3時間以上」の比率は男子に比べ女子で高くなっている。
 また、性別による家庭学習時間の差は、学校段階が進むにつれて拡大している(「ほとんどしない」の比率:小学生男子6.2%>小学生女子4.5%、中学生男子22.5%>中学生女子18.5%、高校生男子29.0%>高校生女子20.9%)。
■表3-1-2 家庭学習時間(学校段階別・性別)
表3-1-2 家庭学習時間(学校段階別・性別)
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