特集 つながる幼小の「学び」 ―幼稚園・保育園から小学校、その接続を考える―

練馬区立豊玉南小学校

1961年開校。2001年度より、「聴き合う、学び合う活動」をキーワードとした教育活動を展開している。05年度から07年度にかけて文部科学省と東京都教育委員会の学力向上拠点形成事業推進校にも指定されている。また「学校応援団」といって、地域のボランティアの方に学校の中に入ってもらい、放課後に学校で子どもがのびのびと遊べる居場所づくりや、子どもたちの安全を守るための支援をお願いするなど、地域との結びつきも深めている。

渡邊由美子

校長 渡邊由美子
児童数 404人
学級数 12学級
所在地 〒176-0014 練馬区豊玉南2-14-1
TEL 03-3993-6425
FAX 03-5984-0639
URL http://www.toyotama
-s-e.nerima-tky.ed.jp/


VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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【実践事例】
東京都
練馬区立豊玉南小学校

「聴き合う力」を育て子どもの学び合う力を高める

近年、入学してくる子どものコミュニケーション力に変化が見られるという。
それを敏感に感じ取った豊玉南小学校の教師たちは、
学びの基礎となる力として「聴き合う力」に注目。
教師と子ども、そして子ども同士の関係づくりから子どもたちの学ぶ力を高めている。

自分を出したがる子と自分を出せない子

 豊玉南小学校の渡邊由美子校長と研究主任の勝沼菜穂美先生は、入学してくる子どもたちの様子が、最近二つに分かれる傾向にあると感じている。「自分を出したがる子」と、「自分を出せない子」だ。
  「自分を出したがる子」は、授業中も盛んに「聞いて聞いて」と教師に向かってくる。だが、「話したい」という欲求は強くても、「相手の話を聞きたい」という気持ちは少ないようだ。教師が話しているのに、席に座って黙って耳を傾けられない子どもも目立つようになってきた。
  一方、自分を出せない子は、自信がなかったり、“おりこうさん”でいようとする意識が強い。例えば音楽の時間。「お気に入りの楽器を使って、好きな音を出してみよう」と教師が呼びかけても、大太鼓のような大きな音がする目立つ楽器ではなく、カスタネットなどの控えめな楽器を選ぶ。そして隣の子どもが楽器を叩く仕草に合わせて、自分も同じように楽器を叩く。「自分らしさを表現してほしい」という場面でも、自己表現をためらう子どもたちが出てきているのだ。
  自分を出したがる子と自分を出せない子の増加。一見すると相反する現象のように思えるが、渡邊校長は「抱えている問題の根は同じではないか」と分析する。幼児期における親子間のコミュニケーション不足が原因となっているというのだ。
  「自分の言葉をだれかにじっくりと聞いてもらったあとに、相手から言葉を返してもらうという会話のやりとりを、家庭の中で体験していない子どもが多いのではないかという気がします。だから『自分を出したがる子』は、聞いてほしいという欲求が心の中に渦巻いていて『先生、聞いて聞いて』となるわけです」
  また自分を出せない子どもについては、「常に評価されているというプレッシャーを感じながら育ってきたタイプに多いように感じる」(勝沼先生)という。
  「今の保護者の方の中には、教育熱心なあまり、指示語や注意の言葉ばかりを子どもに投げかけている方が少なからずいると思います。親子の接触の機会は多くても、お互いの言葉に耳を傾け合うという本当の意味での対話が少ないんですよね。そのように育てられた子どもは、『間違ってはいけない』という意識が常にあるために、自由な自己表現ができにくくなっているのだと思います」

写真
写真1 1年生の音楽の授業。お気に入りの楽器で好きな音を出しながら、「おとのマーチ」の歌詞「きいてきいて○○な音がする」に言葉を当てはめ、みんなで歌い、聴き合う

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