ベネッセ教育総合研究所が選ぶ「調査データ クリップ!子どもと教育」

規範意識と問題行動

規範意識と問題行動 〜第1回〜

第1回

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  1. 高校生の規範意識、教師と30ポイント以上の差
  2. 法律違反は×だが、無断外泊には寛容な日本の高校生
  3. 友だちの悪いことには見て見ぬ振りの中高生
  4. 道徳の時間は楽しい? 学年とともに減少

第2回

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  1. 中高生に高い禁煙意識
  2. 学校段階とともに薄れる、万引きに対する犯罪意識
  3. 性的経験の早期化、高校生男女とも上昇
  4. 社会全般の規範意識の低下がもたらす少年非行

【1-1】高校生の規範意識、教師と30ポイント以上の差

高校生と教師の規範意識

出典
「現代高校生の規範意識」友枝敏雄・鈴木譲 編著/九州大学出版会(2003)
調査対象
福岡県内の高校2年生2,117名(公立7校、私立2校)、福岡県内の高校教師(有 効回答数551票)

高校生の規範意識に関する調査結果をみると、「エレベーターや電車のドアなどで、降りる人を待たずに乗りこむ」という項目について、「抵抗を感じる」「やや抵抗を感じる」とする高校生が88.7%、同じく「年上の人に対してタメ口で話す」ことについて抵抗を感じる高校生が76.2%いることがわかる。割り込み・人の流れへの逆行という他人へのあからさまな迷惑行為や人間関係の配慮に関しては高校生の規範意識は高いといえよう。
 しかし、「電車やお店の入り口付近の地べたに座る」「電車やバスの車内で、携帯電話やPHSを使って話しこむ」ことに抵抗を感じる高校生はそれぞれ67.8%、61.0%と低くなり、「電車やレストランの席などで、女性が化粧をする」にいたっては、約半数の53.0%にまで低下する。

一方、教師はどの項目についても90%以上が抵抗感を示しており、高校生の規範意識との間に顕著な差がみられた。とくに「電車やレストランの席などで、女性が化粧をする」(高校生53.0%、教師90.7%)、「電車やお店の入り口付近の地べたに座る」(同67.8%、98.8%)、「電車やバスの車内で、携帯電話やPHSを使って話しこむ」(同61.0%、96.0%)では、いずれも30ポイント以上の開きがみられる。
 これらは大人が若者のモラル低下やだらしなさを批判する際にあげられる行動であり、世代間の規範意識の差や迷惑行為に関する認識の違いがみてとれる。

【1-2】法律違反は×だが、無断外泊には寛容な日本の高校生

高校生の規範意識(日米中比較)

出典
「高校生の学習意識と日常生活−日本・アメリカ・中国の3ヶ国比較−」財団法人日本青少年研究所(2005)
調査対象
日本・アメリカ・中国の高等学校1〜3年生(日本:11校1,320人、アメリカ:12校1,020人、中国:12校1,309人)

高校生の規範意識に関する項目について日米中3か国を比較した結果をみると、「万引きする」「麻薬を使用する」という項目については、3か国とも「絶対にしてはならない」と回答した割合が70%以上と高い値を示している。

「タバコを吸う」「お酒を飲む」「無断外泊する」の3項目については、「絶対にしてはならない」と回答した割合が、日本は米国、中国に比べて低い値となっている。とくに「無断外泊する」については、「絶対にしてはならない」と回答した日本の高校生は23.5%と、米国(43.5%)に比べて20ポイント、中国(64.5%)に比べ41ポイントも低くなっている点は特徴的である。
 万引きやタバコ、麻薬、酒については法律で規制されているが、無断外泊については法律による絶対的な規制がないために、日本の高校生の意識が低く、学校や家庭でも強く規制したり、指導する機会が少ないのではないかと思われる。

また、「お酒を飲む」についても、「絶対にしてはならない」と回答した割合が日本は36.7%と、米国(52.0%)、中国(51.3%)に比べてかなり低くなっている。日本は飲酒に関して寛容な社会であるといわれるが、高校生の意識にも影響しているものと思われる。

【1-3】友だちの悪いことには見て見ぬ振りの中高生

小中高生の道徳観・正義感に関係する行動

出典
「青少年の自然体験活動等に関する実態調査」独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センター(2006)
調査対象
全国の公立小学校4〜6年生、公立中学校2年生、公立全日制高等学校2年生(全体で26,480人)

青少年の自然体験活動等に関する実態調査結果から、小中高生の生活習慣や道徳観・正義感に関する項目をみると、家や近所・知人へのあいさつを「必ずしている」「だいたいしている」割合が、どの学年、学校段階でも7〜8割前後と、あいさつ習慣の定着度は高いといえる。しかし、家族へのあいさつに関してみると小学生では80%以上が「必ずしている」「だいたいしている」と答えているのに対し、中学生では73.8%、高校生では69.5%と徐々に減少し、「あまりしていない」「していない」が2〜3割に増える。生活の変化や反抗期などの影響であろうか。

「バスや電車で体の不自由な人やお年寄りに席をゆずること」については、どの学年、学校段階でも、「必ずしている」「だいたいしている」児童生徒が4割弱と、学校段階での差はあまりみられない。これに対して、「友達が悪いことをしていたら、やめさせること」は、小学生に比べて、中学生、高校生で「必ずしている」「だいたいしている」の割合が15ポイント以上減少している。ここにも、中学生、高校生の見て見ぬ振りの希薄な友人関係(『友人関係』第2回【2-3】参照)を垣間見ることができる。

【1-4】道徳の時間は楽しい? 学年とともに減少

道徳の時間についての児童生徒のうけとめ

出典
「平成15年度 道徳教育推進状況調査の結果について」文部科学省(2004)
調査対象
全国の小学校23,092校、中学校10,812校

学校に対して、道徳の時間を「楽しい」あるいは「ためになる」と感じている児童生徒がどの程度いると思うかを質問した結果をみると、「ほぼ全員」と答えた割合は、小学校低学年では43.4%、中学年では24.7%、高学年では16.9%となっており、中学校の第1学年では10.3%、第2学年・第3学年では7.6%と、学年が上がるにつれて減少していることがわかる。とくに中学校では、「楽しい」あるいは「ためになる」と感じている生徒が「ほぼ全員」または「3分の2くらい」を合わせても50%に満たない。

また同調査では「道徳の時間の指導を一層充実させるために各教師に特に求められること」として、「教材の分析、魅力ある教材の選定及び開発・活用等の工夫」をあげている学校が、小学校では67.4%、中学校では69.7%ともっとも多く、教師が道徳の時間を「楽しい」あるいは「ためになる」という児童生徒を増やすために、教材研究を重要視していることがうかがえる。

参考資料
「現代高校生の規範意識」九州大学出版会
「高校生の学習意識と日常生活−日本・アメリカ・中国の3ヶ国比較−」財団法人日本青少年研究所
「青少年の自然体験活動等に関する実態調査」独立行政法人国立青少年教育振興機構
「平成15年度 道徳教育推進状況調査の結果について」文部科学省