ベネッセ教育総合研究所が選ぶ「調査データ クリップ!子どもと教育」

進路選択・キャリア教育

進路選択・キャリア教育 〜第1回〜

第1回

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  1. 大学・短大への進学率が過半数超、男女差なくなる
  2. 大都市で中学受験の希望が急増
  3. 小・中学生の段階で半数が文系・理系を意識
  4. 保護者の8割、大学卒に何らかのメリット期待

第2回

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将来なりたい職業は、あこがれから現実的・安定へ 「仕事を通じて社会貢献」の意識が強まる 就職後1年目で離職する割合が高い など


第3回

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企業が求める能力と若者の強みにギャップ 中学受験に地域(人口規模)による違い 大卒・短大卒の母親はいい大学、他は資格を重視


第4回

「他の大学に入り直したい」と思う学生は4割 6〜8割の子どもが身近で現実的な将来をイメージ

【1-1】大学・短大への進学率が過半数超、男女差なくなる

大学・短大への入学者数の推移

出典
「平成18年度版 文部科学白書」文部科学省(2006)/「平成19年度学校基本調査速報」文部科学省(2007)
調査対象
全国

大学・短大への入学者数の推移をみると、平成4年をピークに18歳人口が減少しているにもかかわらず、大学・短大への入学者数の合計にそれほど大きな減少はない。大学・短大の別でみると、大学への入学者は増加傾向にあるが、短大への入学者は近年減少傾向にある。

進学率でみてみると、平成2年には大学・短大への進学率が36.3%であったのが、その後増加を続け、平成17年に51.5%と5割を超え、平成19年には53.7%となった。さらに、高専・専門学校を加えた進学率は、平成19年で76.3%となっており、日本の高等教育機関への進学率の高さがうかがえる。

また、文部科学省「平成19年版 学校教育総括」によると、昭和35年には男子14.9%、女子5.5%と男女差の大きかった大学・短大への進学率が、平成18年には男子53.7%、女子51.0%となり、進学率における男女差はなくなったといえそうだ。

【1-2】大都市で中学受験の希望が急増

中学受験の希望(小学生、地域別)

出典
「第4回学習基本調査・国内調査(小学生版)」ベネッセ教育研究開発センター(2006)
調査対象
全国3地域[大都市(東京23区内)、地方都市(四国の県庁所在地)、郡部(東北地方)] の小学5年生 2,726名

小学5年生を対象に中学受験の希望をたずねた調査結果をみると、中学受験を希望する小学生の比率は徐々に増え続け、1990年の15.7%から2006年には23.5%と7.8ポイント増加した。

地域別にみると、いずれの地域においても増加傾向にあるが、とくに大都市での伸びが著しく、2006年には37.7%と、4割弱の小学生が中学受験を希望していることがわかる。

2001年から2006年にかけて大幅増になったのは、学習指導要領の改訂により2002年度から「学習内容、授業時数の削減」「完全学校週5日制」が実施され、学力低下が問題となるなど、公立学校への不安を反映したものと思われる。

【1-3】小・中学生の段階で半数が文系・理系を意識

進路選択を意識した時期

出典
「平成17年度経済産業省委託調査 進路選択に関する振返り調査-大学生を対象として-」ベネッセ教育研究開発センター(2005)
調査対象
全国の4年制大学に通う大学1年生〜4年生約6,500名

大学生を対象に行った進路選択に関する振返り調査をみると、「文系・理系を意識した時期」のピークは「中学生のころ」で40.0%、次いで「高校1年生」が30.2%となっている。小・中学生までの段階ですでに半数が文系・理系を意識していることがわかる。
 次に、「大学での専攻分野を意識した時期」をみてみると、「高校3年生」が29.6%、「高校2年生」が29.4%と、高校2年生・3年生がほぼ同じ割合となっている。さらに「高校1年生」(17.3%)を加えると約4分の3が高校時代に専攻分野を意識していることになる。
 また、「進学する大学を意識した時期」は、「高校3年生」の57.7%をピークに、次いで「高校2年生」が24.0%となっており、約8割が高校2年生以降に進学する大学を具体的に考えていることがわかる。

それに対して「職業を意識した時期」は、小・中学校時代(「小学生のころ」「中学生のころ」の合計)が24.8%、高校時代(「高校1年生」「高校2年生」「高校3年生」の合計)が29.9%、大学1〜4年生の合計が25.0%、「まだ考えていない」が19.1%と、回答がほぼ四分される結果となっている。

【1-4】保護者の8割、大学卒に何らかのメリット期待

高校卒業後の進路に関する意見(保護者)

出典
「高校生の進路についての調査」東京大学大学経営・政策研究センター(2006)
調査対象
全国4,000人の高校3年生とその保護者

高校卒業後の進路に関して高校3年生の保護者にたずねた結果をみると、「誰でも大学に入れる時代だから大学を出ても大した得にはならない」という項目に対して、「全くそうは思わない」と「そうは思わない」を合わせると、約8割の保護者が大学を出ることに何らかのメリットがあると考えていることがわかる。
 「資格や免許のとれる学校にいってほしい」については、20.8%の保護者が「強くそう思う」、54.3%の保護者が「そう思う」と答えており、高校卒業後の進路として、大学や専修学校などの高等教育機関に資格や免許の取得を期待している様子がうかがえる。

「高校を卒業したら経済的に自立してほしい」という項目に対しては、「全くそうは思わない」と「そうは思わない」を合わせると、約3分の2の保護者が否定的な回答をしている。これは、子どもが「学生の間」または「定職に就くまで」は経済的に面倒をみてもよいと考える親が6割いるという調査結果(『教育費』第2回【2-2】参照)とも一致する。

その一方で、「自宅から通勤、通学してほしい」「家庭の経済力に見合った進路を選んでほしい」には、それぞれ66.3%、76.9%の保護者が「強くそう思う」または「そう思う」と答えている。

参考資料
「平成18年度版 文部科学白書」文部科学省
「平成19年度学校基本調査速報について」文部科学省
「第4回学習基本調査・国内調査(小学生版)」ベネッセ教育研究開発センター
「平成17年度経済産業省委託調査 進路選択に関する振返り調査-大学生を対象として-」ベネッセ教育研究開発センター
「高校生の進路についての調査」東京大学大学経営・政策研究センター