「データで考える子どもの世界」

ベネッセ教育総合研究所が選ぶ「調査データ クリップ!子どもと教育」

子育て

子育て 〜第3回〜

第3回

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  1. 母親が心がけるしつけは人間関係の大切さ
  2. 子育てのストレス、自分の時間の確保が多い
  3. 鉛筆を正しく持てる小・中・高生は1割以下
  4. 15歳のときに一人でできると思うこと、日本、韓国で低い傾向

第1回

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子どものいる世帯が減少、世帯内児童数も減少傾向 保育所の利用児童数増加、待機児童数は減少傾向 少子化対策で望まれる保育所増、「現状に満足」はゼロ など


第2回

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6割の母親が、子育ても自分の生き方も大切にしたい 子どもの成長とともに変化する子育ての悩み 日本の子育て 経験より育児書 など


第4回

自身の生き方よりも子育てを優先する母親が増加 入園が決まらなかった母親の半数以上が仕事を断念 幼稚園・保育所とも、公私で一斉活動の内容に違い など


第5回

「家事・育児に今以上にかかわりたい」父親が増加 「自分は妻に必要とされている」と感じる父親が減少 2004年に比べ、父親・母親との会話が増加

【3-1】母親が心がけるしつけは人間関係の大切さ

子育てで心がけていること

出典
「第3回子育て生活基本調査報告書」ベネッセ教育研究開発センター(2008)
調査対象
首都圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の小学1年生から中学3年生の子どもをもつ保護者 7,282名 *分析は母親のみ 6,770名)

小中学生の子どもをもつ母親に、子育てで心がけていることをたずねた調査結果をみると、「とても心がけている」割合がもっとも高かったのは、「あいさつやお礼ができるようにしつけている」(67.8%)で、次いで「友だちづきあいは大切にするように教えている」(58.3%)、「自分でできることは自分でするようにしつけている」(50.9%)となっている。母親の多くが子育てにおいて人間関係を大切にすることや、自立に向けた基礎的なしつけを中心に心がけている様子がうかがえる。

一方、中学生で所有率が6割を超えた携帯電話(『携帯電話』第3回【3-1】参照)については、携帯電話を持っている小学生の母親の52.7%、中学生の母親の40.9%が携帯電話の使い方について「とても心がけている」と回答しており、心がけていないという母親は少ない。小学生に携帯電話を持たせる際には、しつけに心がけている様子がうかがえる。

【3-2】子育てのストレス、自分の時間の確保が多い

子育て生活での経験とストレス

出典
「第1回妊娠出産子育て基本調査報告書」Benesse次世代育成研究所(2007)
調査対象
第1子を持つ、または妊娠中の妻・夫 4,479名

育児期の妻・夫に、乳幼児のいる生活の中でストレスになり得る12項目について経験の有無と、ストレスの度合いをたずねた調査結果から、妻のストレスについて10項目を取り上げてみた。

育児期の妻がストレスを「経験したことがある」と回答したものの上位3項目は、「あなたがおもちゃや散らかっているものを片付け続けている」(93.0%)、「子どもに遊んでとせがまれる」(80.4%)、「自分のための時間を確保するのが難しい」(74.7%)となっている。
  経験している割合が高く、ストレスも強く感じている(「非常にイライラする」+「ややイライラする」)ものは、「自分のための時間を確保するのが難しい」(経験率74.7%、ストレス55.2%)、「子どもに文句や不平を言われたり、駄々をこねられたりする」(経験率66.4%、ストレス56.0%)であった。
  子どもとの関係において、文句や不平を言われたり駄々をこねられたりすることにはストレスを感じる人が多いが、遊んでとせがまれることに対しては、ストレスと感じる人は少ないことがわかる。

一方、経験したことがある割合は低いが、経験した人のストレスが高いものは、「夜泣きがひどい」(経験率39.4%、ストレス60.5%)で、経験した人の中での割合としては第1位となっている。

【3-3】鉛筆を正しく持てる小・中・高生は1割以下

子どもの生活技術(正しくできる割合)

出典
「青少年の生きる力を育むための総合的調査研究」文部科学省(1998)
調査対象
小学生〜大人 2,739名

生活技術の実技調査から、子どもがふだん接する機会が多い5項目を取り上げてみた。
  正しくできる割合が高かったのは、「生卵を黄身をこわさずに正しく割れる」「ひもを前で正しく花結びができる」で、いずれも小学校6年生で5割を超えている。ひもの花結びについては、小学校1年生では12.5%だったものが、6年生では58.5%と大きく増加し、衣服や靴などのひもを結ぶ機会が増えるにつれ、折々大人の指導がよく行われているものと思われる。

「箸を正しく持って使える」割合は、年齢とともに増える傾向にあるものの、小学校全体で15.7%、中学校全体で23.1%、高校で23.7%と、2割強にとどまっている。親の世代(26歳〜50歳)をみても、いずれも50%台前半で推移しており、約半数の親が箸を正しく使えていないことがわかる。このことが子どもたちに大きな影響を与えていると思われる。

「鉛筆を正しく持って使える」割合は、どの学齢段階においても1割以下と極端に低く、加齢による増加もあまりみられない。親の世代をみても、30歳台〜40歳台の前半までは15%前後、46〜50歳は27.5%と、正しく持てる人が3割にも満たないことがわかる。鉛筆の持ち方は低年齢のうちに身につき、その使い方が固定してしまうものと思われる。

さらに、意識調査と実技調査の結果を対比させてみると、鉛筆を正しく持って使えていると思う割合と実技結果の差は、各年齢層においても38〜71ポイントの差があり、意識と実態には大きなズレがあることがわかる。

【3-4】15歳のときに一人でできると思うこと、日本、韓国で低い傾向

子どものしつけ 15歳のときに一人でできると思うもの(複数回答)

出典
「家庭教育に関する国際比較調査報告書」独立行政法人国立女性教育会館(2005)
調査対象
日本、韓国、タイ、アメリカ、フランス、スウェーデンの0〜12歳までも子どもと同居している親、またはそれに相当する人(サンプル数は各国とも約1,000)

家庭教育に関する国際比較調査から、自立のしつけについて、15歳のときに一人でできると思うものについてたずねた結果をみてみると、「身の回りの整理整頓をする」「マナーを守る」ことができると思う親は、日本、韓国、アメリカ、フランスとも85%以上で、ほとんどの子どもは「一人でできる」と考えられている。

「家族のために食事を作る」は、アメリカで約8割の親ができると思っているが、日本(54.9%)、韓国(38.5%)、フランス(56.7%)では低く、国によって差が生じている。これを子どもの性別でみると、4か国とも女の子への期待が大きいが、その差がもっとも大きいのは日本で、27.3ポイントと他の国を大きく上回っている(フランス16.1ポイント、韓国17.0ポイント、アメリカ11.8ポイント)。

「働いて報酬を得る」も国によって差が現れた項目で、アメリカは、男女ともに8割以上が「できる」と考えられており、他の3か国に比べて圧倒的に高い割合を示している。

参考資料
「第3回子育て生活基本調査報告書」ベネッセ教育研究開発センター
「第1回妊娠出産子育て基本調査報告書」Benesse次世代育成研究所
「青少年の生きる力を育むための総合的調査研究」 文部科学省
「家庭教育に関する国際比較調査報告書」独立行政法人国立女性教育会館