ベネッセ教育総合研究所が選ぶ「調査データ クリップ!子どもと教育」

子育て

子育て 〜第4回〜

第4回

  1. 家庭でのしつけや教育に熱心な母親が増加
  2. 自身の生き方よりも子育てを優先する母親が増加
  3. 入園が決まらなかった母親の半数以上が仕事を断念
  4. 幼稚園・保育所とも、公私で一斉活動の内容に違い

第1回

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子どものいる世帯が減少、世帯内児童数も減少傾向 保育所の利用児童数増加、待機児童数は減少傾向 少子化対策で望まれる保育所増、「現状に満足」はゼロ など


第2回

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6割の母親が、子育ても自分の生き方も大切にしたい 子どもの成長とともに変化する子育ての悩み 日本の子育て 経験より育児書 など


第3回

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母親が心がけるしつけは人間関係の大切さ 鉛筆を正しく持てる小・中・高生は1割以下 15歳のときに一人でできると思うこと、日本、韓国で低い傾向 など


第5回

「家事・育児に今以上にかかわりたい」父親が増加 「自分は妻に必要とされている」と感じる父親が減少 2004年に比べ、父親・母親との会話が増加

【4-1】家庭でのしつけや教育に熱心な母親が増加

家庭でのしつけや教育方針(経年比較)

出典
「第3回子育て生活基本調査(幼児版) 速報版」ベネッセ教育研究開発センター(2009)
調査対象
首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)、地方市部、地方郡部の幼稚園児・保育園児をもつ保護者 6,131名 *分析は首都圏の母親(3,069名)

幼稚園児・保育園児をもつ母親に、子どもを育てる上でとくに心がけていることをたずねた調査結果をみると、5年前と比べて多くの項目で選択率が上昇しており、家庭での教育やしつけに熱心な母親が増えたことがわかる。
 とくに「朝起きる時間や夜寝る時間など規則正しい生活リズムが身につくようにしつけている」は、2003年調査では56.4%だったのが、2008年調査では70.7%と、5年前と比べて14.3ポイント上昇した。「早寝、早起き、朝ごはん」といった基本的生活習慣の重要性が、幼児をもつ保護者に浸透しつつある様子がうかがえる。
 また、「手作り料理を食べさせるようにしている」(同40.7%→50.6%)、「テレビゲームや携帯ゲーム機で遊ぶ時間は決めている」(同18.8%→29.8%)も、約10ポイント上昇した。

家庭で心がけているものでとくに多いものは、「基本的なあいさつやお礼ができるようにしつけている」(87.8%)、「一人でできることは、できるだけ自分でさせるようにしている」(73.8%)、「友だちと仲よくするように教えている」(73.5%)で、これらの項目は2003年調査でも同様に選択率が高かった。

【4-2】自身の生き方よりも子育てを優先する母親が増加

子育てやしつけに関する意識(経年比較)

出典
「第3回子育て生活基本調査(幼児版) 速報版」ベネッセ教育研究開発センター(2009)
調査対象
首都圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)、地方市部、地方郡部の幼稚園児・保育園児をもつ保護者 6,131名 *分析は首都圏の母親(3,069名)

幼稚園児・保育園児をもつ母親の子育て観についてたずねた調査結果をみると、「子育ても大事だが、自分の生き方も大切にしたい」と考える母親が、2003年調査では63.8%であったのが、2008年調査では56.7%と、この5年間で7.1ポイント減少した。自分自身の生き方よりも子育てのほうを優先する母親が増えていることがわかる。

また、しつけについては、「わがままを言ったら、わかるまで言葉でさとす」(2003年62.4%→2008年65.0%)、愛情面では、「子どもを十分に愛している自信がある」(同70.8%→72.7%)と思っている母親が微増した。
 全体的に子育てや子どもの教育に熱心な母親が増えている様子がうかがえる。家庭や地域の教育力の低下が叫ばれ、家庭の教育力の重要性が認識されつつあるのだろうか。

【4-3】入園が決まらなかった母親の半数以上が仕事を断念

認可保育園への入園状況と預け先が決まらなかった母親の動向

出典
「首都圏“待機児童”レポート」Benesse次世代育成研究所(2009)
調査対象
2009年4月入園に向けて、首都圏の認可保育園に入園申請をした母親 720名

首都圏の認可保育園に入園申請をした母親を対象に入園状況等をたずねた調査結果をみると、入園申請をした母親のうち、4月に子どもが認可保育園に入園できたのは47.2%と半数を割った。「自治体の助成を受けている認可外保育所」(6.9%)、「その他の認可外保育施設」(2.4%)等を合わせても、実際に保育サービスを利用できたのは6割にとどまっており、4割の母親は預け先がどこにも決まらなかったことがわかる。

預け先が決まらなかった母親に子どもの保育をどうしたかをたずねたところ、「仕事、または再就職するのをやめ、自分で子どもの世話をすることにした」が56.1%ともっとも多く、次いで「自分または配偶者の育児休業を延長し、子どもの世話をすることにした」(23.0%)、「祖父母・親戚にあずかってもらうことにした」(11.5%)と回答している。
 首都圏では、子どもが認可保育園に入園できず、どこにも預け先が決まらなかった母親の半数以上が、復職や再就職をあきらめる傾向にあることが浮き彫りとなった。

【4-4】幼稚園・保育所とも、公私で一斉活動の内容に違い

教育課程内の時間・通常の保育の時間に学級・クラス全員が一斉に行う活動

出典
「第1回 幼児教育・保育についての基本調査報告書」Benesse次世代育成研究所(2009)
調査対象
全国の園児数30人以上の幼稚園、保育所
 幼稚園(国公立401、私立1,203)、保育所(公立1,584、私立1,434)

全国の幼稚園・保育所を対象に、学級(クラス)全員が一斉に行う活動についてたずねた調査結果をみると、幼稚園・保育所ともに、国公立・公営か、私立・私営かでは活動内容に大きな違いがあることがわかった。

とくに、「ひらがな(書き)のワークブック」「ひらがな(読み)のワークブック」「数、計算のワークブック」といった、学習にかかわる活動についてみると、国公立・公営と私立・私営の差が目立つ。私立の幼稚園と私営の保育所では、「ひらがな(書き)のワークブック」「ひらなが(読み)のワークブック」の実施率はともに4割を超えている。私立・私営ではより保護者の要望を反映し、学習にかかわる活動が行われているものと思われる。

また、幼稚園と保育所を比べると、国公立幼稚園より公営保育所のほうが実施率の高い項目が多い。幼稚園に比べて保育所のほうが実施率の高い活動が多いのは、保育所のほうが、在所時間が長いことも影響しているものと思われる。

参考資料
「第3回子育て生活基本調査(幼児版) 速報版」ベネッセ教育研究開発センター
「首都圏“待機児童”レポート」Benesse次世代育成研究所
「第1回 幼児教育・保育についての基本調査報告書」Benesse次世代育成研究所